プエブラ州北部トトナカ山地の農民組織「働き蟻」の同志のこの言葉は、EZLNと先住民組織やインディオ民族の会合の意義を最も適切にまとめている。この言葉は、軽蔑に対して尊厳を堅持すること、上っ面の宣伝に対抗できる深遠なる知恵について語っているからである。積もり積もった疲労、お互いを隔てる距離を克服し、何よりも国内のあらゆる場所で直面している弾圧や簒奪を乗り越え、「完全なものになるため」、出会い、協力しようとする、先住民組織や先住民族の意思について語っているからである。

先住民族、先住民共同体や先住民組織とEZLNの出会いの場には、59団体の代表団がやってきた。

8月13日の朝、サパティスタが取り戻した土地に設営されたハビエル・エルナンデス新入植地で会合が始まってからも、先住民族から派遣された人が次々と到着した。第6ラカンドン密林宣言を支持し、自分たちが自治空間を構築し、防衛している方法について語り、この数十年間、自分たちが歩んできた道筋、直面してきた数々の障害、サンアンドレス合意に関する政治家連中の裏切りの後の事態を説明するため、彼らはこの地に来たのである。グスタボ司令官、ケリー司令官、叛乱副司令官マルコスの歓迎挨拶の後、代表団やオブザーバーを含めた300名以上の参加者は39の発表に耳を傾けた。

集会の発言要旨は雑誌レベルディアのホームページで読むことができる。私たちがまとめた簡単な発表議事録から、いくつかの女性の発言を取り上げることにしたい。それらの発言はこの会合に関する唯一の視点ではないし、ハビエル・エルナンデスで起きたこと全体を物語るものでもない。

オアハカの一女性が発言したように、「私たちに発言する機会はほとんど認められない」のがこれまでの実態だった。だが、今回の会合では、ケリー司令官の呼びかけに応えて、多くの女性が発言した。
ケリー司令官は次のように呼びかけた。
「女性として、私たちはあらゆるタイプの活動に参加し、活動する権利をもつ。女性として、自ら統治し、組織する権利が保障され、私たちが女性として、私たちの文化や言語に対する尊重も明確されるべきである。私たちは協力して闘うこと、ともに歩むことを学ばねばならない。そうすれば、私たちは活動を繰り広げることができる。… 私たち女性は皆さんの言葉や意見を聴くため、ここにいるのです。以上です。どうもありがとう」

「とても遠く、ここに着くまでに疲れきったわ」というほど、ずいぶん遠方のベラクルス州ウアヤココトラ地区センソナパ村からきた、ショチトリヒタリシュトリ・メシカトル・アルテペトル（先住民共同体のための花の目覚め）というグループのナウァトル語話者の女性代表は、嗚咽しながら話はじめた。
「皆さんにお話したいのは、私たちの町では正義が実行されていないことです。正直言って、私たちの村で起きたことを話すと、とても悲しくなります。私たちの慣習を取り戻そうとした一人の女性、私たちの仲間の一人が、自宅で銃撃されたのです。幸い神のご加護により、彼女は回復し、私たちは安心し、再び団結しています。だから、私たちは組織を信頼し、仲間から何かを手に入れたいのです。私たちの役に立たない統治者には、お休みしてもらうべきです。連中は机に座るだけで、お金を無駄に使っていることを何ら恥じないのです」
｢私たちは下僕でしかないのです｣と言いながら、流れる涙で彼女の発言は中断した。彼女の告発では、彼女の村に政府の援助はいっさい届かなかった。
｢政府からみれば、私たちの存在は何の価値もないと言っています。私たちはお金などと無縁だと言っています｣
しかし、政府の宣伝は、センソナパ村も利用し、村は政府の開発計画の受益者としてテレビ番組で紹介されている。
「そんなことは嘘っぱちです。連中が言っているだけです。連中はまったく恥じていません。私たちが先住民であることを恥ずかしく思っているのです。連中は私たちに一定の援助を与えたと言いますが、本当ではありません。私たちは何も受取っていません。…そんなことを言っている連中は私たちに恵みを施すつもりはないのだし、私たちも連中から何かの施しを必要としていません。私たちが欲しいのは正義です。私たちは、いくつも書簡を送り、たくさんの書類を作りました…ネズミどもがそれらの書類を横取りしたと思っています。これまで、私たちのために何もされていません。私たちのための正義など存在したことはないのです。先住民の仲間である皆さん方と協力すれば、私たちは何でも達成できるでしょう。ここに集まった私たち全員の共同体で、正義を勝ち取る戦いを前進できるでしょう」

先住民女性の参加や彼女たちの主張のなかで、とくに力強い存在感を示したのは、メキシコ市に移住・居住する女性たちだった。サパティスタの呼びかけに応え、17の組織は「第6宣言を追求するメキシコ市の先住民組織コレクティボ」を結成した。マサウァの女性は、1940年代にメキシコ市に移住した祖父母の歴史を次のように語った。
「祖父母は、自分たちを理解しようとも意見を聞こうともしない人たちに出くわしたのです。 祖父母が唯一できたのは、路上で仕事を見つけることでした。行商人、石工職人、肉体労働者、荷物担ぎの仕事、道路掃除の仕事などです。役所から何かを受取ることは一度もなかった。私たちが受取ったのは、嘲りや軽蔑でした。私たちは怪物のように、ものごとを考えられない存在だと、連中は思っているのです。悪しき政府は、私たちが尊厳をもてる仕事につけるチャンスを与えたことはありません。私たちは労働者で、泥棒ではありません。額に汗し、誇りをもって、自らの生活の糧を稼いでいるのです」
さらに彼女はサパティスタとの出会いの歴史と未来について語った。
「1994年以降、私たちはサパティスタの仲間の戦いに関心を払ってきました。緊急事態が出されたことを知りました。しかし、私たちは怯まず、コミュニケに注意を払いつづけ、17組織に情報を流してきました。私たちが戦いつづける理由ははっきりしています。仲間の皆さん、自由、正義、民主主義を獲得するためです。
私たちはメキシコ連邦地区に住んでいますが、人間としての尊厳のもてる住宅を手にしているわけではありません。崩れかけの屋根、同じ場所で多くのことをしなければならない狭い所に住んでいます。４・５家族が一室を分け合い、鰯の缶詰のようにひしめきあって暮らしています。こんな状態では尊厳のもてる住宅と言えません！変化をもたらすことを宣伝している政府に対して、私たちはこうした不満があります。　
現在、政府は、公道での商行為をすべて禁止するバンドと呼ばれる法律を作成しています。現在、新政府の連中が市民法と呼ぶ法律があります。自動車のフロントガラスを磨く貧しい人たちがいます。どこに連中の言っている変化があると言うのでしょうか？何千人もが仕事や住宅もなく、無一物の状態におかれ、先住民でない人も、街頭で物売りをしなければならないのです。バンドだとか、歴史中心地区を壊しているという口実で、私たちは歴史中心地区から追い出されました。
だから、こうした一連の不正義に対して、まさに皆さんとともにいることで、私たちは闘っているのです。私たちはここには心があることを知っています。私たちは心の声に耳を傾けています。だからこそ、私は確信しています。私たちが闘いを継続することにこそ、私たちの価値はあるのです」

「私たちは都市の先住民を組織化するために多大の努力を傾けなければならない。私たちは都市に住んでいるが、先住民であることをやめたわけではないからである」ので、メキシコ市の移民先住民会議によれば、都市における共同体的生活を強化するため、すべきことはまだまだあるという。

メキシコ州トルカ市近郊のサンパブロ・アトクパンに住む「道を創るオトミ組織」の女性によれば、都会で生活することで、新たな形態の搾取と軽蔑にさらされるという。
「私たちは奴隷の状態のままです。以前は大農園で農園管理人の支配下にあったが、近代化された現在では、産業が支配者で、農園管理人のかわりに監督がいます。彼に少なからぬお金をピンはねされ、私たちは屈服しつづけています」
頬をつたう涙を気にすることなく、彼女は話しつづけた。
「サパティスタの闘いは私たちの闘いです。私たちは少数者ではなく、人民そのものです。私たちを統治してきた連中に、これからは投票しないほうがいいのです。人類を搾取する政府などもういりません。私たち自身による自治に賛成します」

女性たちの声は自分の町や自分たちの戦いについて語るだけではない。多くの女性が共同体や集団における政治や組織化に関してさまざまな提案を行なっている。

シャニカ共同体の先住民の権利防衛委員会の女性は、「よりよく組織化をしなければ生き残ることができません」と強調する。そして、先住民相互の調整を進めることを呼びかけている。それは、「私たち若者から学習するという可能性を完全に奪い、私たちを仕事も医療サービスもない状態にしている新自由主義に反対するため」、オアハカ州で展開されている「ファシスト的な弾圧」に抵抗するためである。

オアハカ州先住民民衆調整委員会「リカルド・フローレス・マゴン」の女性は、先住民運動の傾向や展望について組織が行なった分析を紹介し、次のように述べた。
「弾圧に対する抵抗は現在も続いています。私たちは権力を奪取するつもりはありません。対抗権力をつくり上げ、私たちの問題の解決をめざしています。共同体では、いつもそのことを考えています」

プレペチャ民族組織を代表して、一人の女性代表が発言し、「EZLNと調整するための直接的な連絡網体制を確立する」必要性があることを指摘した。さらに、最低限の活動方針と計画を定めることで、先住民組織や先住民族が、第6宣言に賛同している他のセクターとの関係を調整し、さらには、「先住民、非先住民を問わず、他の仲間たちに、私たちと合流するよう呼びかける」ようにするべきだと述べた。

チアパス州のバチャホン・ミッションの女性同志によって派遣された一女性は、｢私たちの先祖がやってきたように、私たちの領域をどのように防衛し、管理していくか｣を探る必要性に留意するべきだと述べた。 さらに、団結を堅持し、チアパスの諸組織のあいだで合意を形成するよう呼びかけた。

オアハカ州フアレス山地組織連合代表として発言したサポテカの女性代表は、自分の言語で挨拶できないことを明らかにした。彼女は、学校で自分の言語の使用を禁じた公教育省の政策の影響を受けた第1世代に属していた。彼女はフアレス山地で次のような提案がなされたことを披露した。
「私たちは男性たちが女性に対して行使している権力のことに気づきました。それは、共同体や家庭において、家庭内暴力や制度的暴力として、よく観察できます。女性がそうした暴力について抗議しても、裁かれることはありません。女性には裁判に訴える権利が認められていないのです。女性が相互扶助の労働やさまざまな役職を担っていないという口実です。お金を管理するのは男性で、時にはお金をアルコール依存症に至る酒に費やすこともあります。
こうした状況に対応するために、女性たちは、共同体の集会における女性の権利の復権、女性の権利が十全に尊重されているかを監視するため、女性長老による協議会を発足させることに合意しました。しかし、女性の闘いは、ジェンダーの問題だけではありません。環境の問題もとても関心のあるテーマです。さらに、私たち女性に悪影響を及ぼしている環境政策を阻止するため、すべきことはたくさんあります。私たちの共同体は消滅の危機にあります。多国籍企業はなんでも簡単に実行できます。私たちの大地や天然資源を独占できます。男女に強制不妊手術を施すために政府の援助資金を流用しています。卵管結搾に同意する女性にだけ屋根のトタン板を供与している。さらに、オポルトゥニダー計画でも同じキャンペーンを展開している。私たちは尊厳ある存在だから、こうした条件付きの援助を拒否してきました」

オアハカ州人権先独立組織の女性代表は、EZLNの経験を評価する発言をした。
「この場にいると、私たちはしっかり支えられているという実感があります。EZLN司令部に女性たちがいることを目の当たりにできるからです 。そのことは、今まであえて自分の声を発そうとしなかった女性にとって、ひとつの希望そのものです。私でも声を発するのはとても恥ずかしいのです。考えていることが頭から抜け、少し前に発言した女性同志のように泣きたくなります」
さらに、次のように説明した。
「私が女性として言葉を失ってきた理由は次のようなものです。私たちの男性、つまり私たちの共同体や仕事場の男性といっしょに肩を組んで、私たち女性は参加してきました。いつも、戦いのときも、私たちは一緒に参加してきました。しかし、いまだに、私たちが女性として尊敬され、司法の場において、私たち女性がもつべき保障される場所が認められることはなかったのです。この会場で、同じような困難に直面する仲間がいることを知りました。生活している場を防衛するために戦わねばならないのだが、しばしば孤立無援で戦うことをよぎなくされました。男性たちが共同体にいないことが多いからです。つまり、男性は移住労働者となり、殺害され、投獄されていたからです。その結果、私たちの共同体はまるでゴーストタウンのようです。私たち女性は、死ぬことはないものの、寂しさで病気になります。私たちは誰の援助も当てにできず、私たちに応える声も見いだせません。私たちの家族の中にも見出せません。政府に期待するものはないのです。政府は私たちを殲滅しようとしたのです」

出典−雑誌レベルディア34号、2005年8月