第３回先住民全国議会(ＣＮＩ)ヌリオ合意のコンセンサス
〈解説〉
2001年２月末から始まった首都行進を主導していたサパティスタの代表団は、３月上旬、ミチョアカン州のヌリオに滞在していた。それは同値で開催される第３回先住民全国議会(ＣＮＩ)に参加するためであった。1996年１月にサンクリストバル市で開催された先住民全国フォーラムを基盤に同年10月に結成されたＣＮＩは、同年２月にＥＺＬＮと連邦政府の間で署名された先住民族の諸権利と文化に関するサンアンドレス合意を先住民族の集団的権利を憲法で認知させる運動を推進するための法的な基盤として活用することを方針として採用した。1998年に開催された第２回議会ではサンアンドレス合意、ならびにCOCOPA作成の先住民法案を支持することが採択された。今回の第３回議会には、国内の56民族のうち41民族から派遣された代表団約3500名が参加している。
訳出した文書は第３回議会の最終文書に盛り込まれたコンセンサスで、３月９日にメヒコ市南郊のサンパブロ・オショトテペックにおいてサパティスタの代表団と議会に参加した先住民の代表団によって全員一致で採択・署名されたものである。
〈本文〉
COCOPA作成の憲法改正案に関するコンセンサス
われわれは以下の点について検討してきた。
今現在、われわれの掲げる正当な大義が勝利したことにより、COCOPA作成の法案に基づいて、先住民族の諸権利と文化を共和国憲法において直ちに認知させるための努力を重ねることがわれわれに任務として課されている。
ＥＺＬＮの男女の代表団が先導する先住民の尊厳を求める大行進のメヒコ市への入城を前にしたこの国民的な日、ミチョアカン州ヌリオにあるプレペチャ国の領域で開催されたわれわれの第３回先住民全国議会で採択された諸合意がまさに承認された。それは、すべてのメヒコ人に、われわれやメヒコ全域の先住民の仲間による自治を求めるという正当な目標のことを知っていただくためである。
われわれ先住民族にとって、この５０９年間の歴史は、搾取、差別、貧困を意味していた。そして、われわれの種や心をもとに誕生したメヒコという国は権勢家どもによって築かれてきた。彼らは、われわれの存在だけでなく、独自の道を歩むというわれわれの至高の権利を無視してきた。そのことがわれわれの血によって築かれた祖国を頑固に否定することを意味していることを知っていない。
過去も現在も、新自由主義が繰り広げる民営化という近代的利害が、われわれの大地、領域、天然資源に襲いかかり、われわれ先住民族の存在だけでなく、それらに対する所有・利用・用益権を無視している。
サンアンドレス合意は、先住民族であるわれわれがもつべき諸権利を全面的に認知するための最初のステップである。
この歴史的な場所では、エミリアーノ・サパタ・サラサール将軍と配下の農民軍が、アヤラ綱領として知られている抑圧された先住民族を解放するための計画を採択した。このアヤラ綱領は、サンアンドレス合意と同じように、農地を取り戻すための要求項目のなかに、共同体性の認知、再構成、育成を中心的な項目として掲げていた。共同体性とは、われわれ先住民族が、自分たちの内部、そして別の民族、別の国や母なる大地とあいだで、個人ならびに集団として構築している特別な関係を表している。
われわれ以下に署名した男女、つまりサンアンドレス合意の履行を求めるために戦っているＣＮＩに参加している先住民族の伝統的権威者や代表団のメンバーは宣言する。
①われわれはミチョアカン州ヌリオで開催された第３回先住民全国議会において確認された合意全体、ならびに個別項目すべてを承認する。ヌリオ合意は、COCOPA作成の草案に基づいてサンアンドレス合意を共和国憲法に組み込むことを求めているわれわれ先住民族の強固な意志を表明したものである。
②われわれは、ヌリオの議会の精神そのものを承認し、サンアンドレス合意が先住民の諸権利と文化に関する国民的コンセンサスを体現していることを承認する。さらにサンアンドレス合意を憲法に組み込むことは国の意志を代表しているという人々にとっても回避できない問題となっていることも承認する。
③われわれをメヒコの心臓部（首都）まで赴かせた正当な戦いで、譲歩することはしない。われわれの諸権利の憲法による認知を獲得するまで、われわれはけっして休息することはないだろう。
④われわれ先住民族の諸権利をCOCOPAが作成した改正案に従って憲法で認知することを国の意志を決定する諸機関に要求する。COCOPA作成の草案は1996年２月16日に連邦政府とＥＺＬＮにより署名されたサンアンドレス合意の理念を正確に体系化したものである。
⑤メヒコ国家の枠組での自治として表現される自決権がわれわれの譲ることのできない権利であるということを憲法で認知するよう要求する。さらに、経済、政治、検察・司法行政、領域問題、文化、教育、あらゆる社会的側面など、日常生活のあらゆる分野において、先住民族独自のアイデンティティと意識に基づいて、自らの命運を決定する権限を行使することを認知するよう要求する。
⑥先住民族としてのわれわれの物質的・精神的存在をわれわれが再生産しているわれわれの居住環境の全体を体現しているわれわれの先祖伝来の大地や領域を憲法で認知するよう要求する。なぜなら、大地はわれわれ先住民族の大事な基盤であるとともに、われわれの千年を越える存在の土台、中心、心となっている共同体性の最も重要な基盤である。
われわれ、インディオ民族、真の民族にとって、われわれの母なる大地は神聖なものであり、大地に居住しているすべての存在、動物、植物、川、山、洞窟、渓谷、天然資源、そしてわれわれ先住民族が母なる大地との関係で蓄積してきた先祖伝来の知恵と同じように神聖なものである。
それゆえ、われわれは大企業が推進している政策をきっぱりと拒否する。なぜなら、母なる大地、そして大地に誕生するすべてのものは売買できる商品ではないからである。自由市場という単純でさもしい論理では、われわれの存在自体を破壊できない。なぜなら、近代的な海賊行為や生物資源略奪によって、われわれの太古からの知識や天然資源を取り上げることはできないからである。われわれ先住民族の参加、協議、承認なしには、われわれの領域において、いかなる計画や大規模計画も実施できない。
⑦多元的な権利体制の構築にあたって、われわれ先住民の規範システムを認知するようことを要求する。その体制は、メヒコ社会を構成する社会秩序を規制している多様な概念や実践を調和させるものである。
⑧国内のすべての先住民地域において非軍事化を行うよう要求する。
⑨自治の防衛、われわれ先住民族の個人・集団としての権利の尊重を求めて戦ったために自由を奪われている国内のすべての先住民の収監者を釈放するよう要求する。
⑩メヒコの全国民に呼び掛けます。ヌリオ合意の実行がメヒコの先住民族、ならびに国全体に対する権利の保障に役立つようにするため、ヌリオ合意を強固に支持しください。
われわれ民族の統合的な再編成をめざして
われわれぬきのメヒコはもういらない
ヌリオ合意承認証書
2001年３月９日、連邦地区ミルパアルタ区サンパブロ・オショトテペックにて署名
出典－Ojarasaca 2001年３月号
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