帰ってきたドン・ドゥリート

�U　もうひとつの沈黙は破られた（小さき者たちへの時間−第２部）

　ここで手紙［1999年９月末から10月の地震、豪雨の被害地から流れ着いた手紙］は終わってる。つまり、読めるのはここまでである。あとは、水や泥が染み込んで読めない。
　カギ爪で私の帽子のあご紐にぶら下りながらドゥリートは、熱心に書かれたものを読みつづけた。
　「どう思われますか」と私は彼に尋ねた。
　「驚くべきことは、政府の犯罪的といえる無責任な対応ではない。地震や豪雨に責任がないこともはっきりしている。しかし、こうした状況に対処してきたやり方と見ると、むかついてしまう。下にいる人々の災難は、新聞の第一面やテレビやラジオのニュースの見出しとなる時だけ、役立にたつというのか。しかし、私の関心を呼び起こしたのはそのことではない。人々がじっと希望をつないでいるということである。本当に力強くて偉大なのは、人々が『私たちは見捨てはしません。もう、二度と』と言っていることである」
　「そうですね。別の人々が沈黙を破ったようです」
　「まだ、たくさん・・・・」
　ドゥリートは私のブーツの所に落下しながら言った

　　　出典：La Jornada,1999/10/19