「数多くの道があるところなら、我々にも選択する権利がある。このような考えは、それらの道はすべて同じ所に向かっているというきわめて基本的なことを忘れてしまっている。つまり、その自由には、目的地、ペース、リズムや速度、同伴者を選択する自由は含まれていないのである。道を選ぶ自由しか含まれていない。しかも、権勢家どもが提供する自由とは、我々の代表としてその道を歩く人物を選出する自由でしかない」と、ドゥリートは言っている。

さらにドゥリートは言っている。
実際、数多くある死の選択肢から選ぶ自由しか、権力は提供していないのである。
あなたは昔懐かしいモデルを選ぶことができる。しかし、それは忘却のモデルでしかない。それは、例を挙げるなら、メヒコの先住民の特異性にもっともふさわしいものとして、彼らに提示されているモデルである。また、あなたは近代化を推進するモデルを選ぶこともできる。それは熱狂的な搾取のモデルである。たとえば、ラテンアメリカの中間階級の消費パターンにもっともふさわしいものとして、彼らに提示されているモデルである。また、あなたは未来志向のモデルを選ぶこともできる。それは21世紀の武器モデルである。たとえば、このモデルは、イラクに遠隔誘導ミサイルを提供している。そのモデルが民主的な精神を有していることは疑いない。なぜなら、そのモデルは、イラク人だけでなく、米国人、サウジアラビア人、イラン人、クルド人、イギリス人、クウェート人(一週間もすれば別の国籍の人も含まれるだろう)も同じように殺しているからである。
これ以外にも、それぞれの好みや嗜好にあわせてたくさんのモデルがある。なぜなら、新自由主義に関して評価できるものがあるとすれば、それは数限りない死のバリエーションを提示していることである。人類の歴史のなかで、このようなことが言える政治体制は、新自由主義をおいてほかには存在しない。

ドゥリートは、棒切れを蔓で結わえ付けた小さな机の上に水の入ったコップを置いた。そして次のように言った。「権力は、たとえば、楽観主義者か悲観主義者のどちらかを選ばなければならないと、我々に言っている。悲観主義者はコップが半分も空になっていると見なす。一方、楽観主義者はコップが半分も充たされていると見なす。しかし、叛乱者は自分が手にしているコップやコップにある水のことを気にすることはない。彼は、別の存在、気ままにコップを充たしたり空にする人物、つまり権力者のことを気にするのである。一方、叛乱者は罠があることを見抜いている。同時に、水が湧き出る泉も見ている」
「複数の道から何かを選ぶことになったとき、叛乱者はより遠くを二度見つめることになる。それらの道が同じ場所に導くものであることを見つめ、自分が行きたい場所には道がないことを見つめる。そこで、ある道が別の道より優れているという、数パーセントの誤差しかないというアンケート調査の結果に気をもむことなく、叛乱者は新しい道の建設に着手する」

こう言いながら、ドゥリートは、世界中の米国大使館の前で、たくさんの「ノー」が書いてあるあらゆる色の紙片をまいている。その大使館といえば、誰もが知っているように、プラスチックのハンバーガーを売っているチェーン店に極めてよく似ている。

　メヒコ南東部の山中から

　叛乱副司令官マルコス

　2003年3月、メヒコ

　出典：Rebeldia No.5（2003年３月号）