旗、接着剤、手　20010320

　ＵＡＭのアスカポツァルコ校に、鉛筆、消しゴム、そして鉛筆削りを持参した。ＵＡＭのイスタパラパ校は、本、図書館、そして沈黙を持参した。そこで、われわれはショチミルコ校には旗、接着剤、手をお渡しすることにしよう。
　そのため、われわれは近代的なコミュニケーションの天才、至高の芸術家、「ヘッドハンター」たちの手に届かない夢、遍歴の騎士の最高の体現者、いちばんよく物を知っているカブトムシであるお方……をお招きすることにした。

　「やめろ！その箇所はおまえに言った台詞とはちがう」とドゥリートは叫んだ。
　「どの箇所ですか？至高の芸術家の箇所ですか？」と私は無邪気さを装って尋ねた。
　「愛嬌のある奴じゃ」と言いながら、ドゥリートはたくさんある手を使って水差しを中に入った。
　私、つまり副司令は、ここで文章を書くのをやめた。なぜなら、ドゥリートはむりやり言葉を横取りしたからである。（ここからはドゥリートのお喋りである）

　「で、人種は何ですか？」
　「どこの国の人ですか?」
　「ああ、ちがうの！エヘン、エヘン」
　「淑女、ならびに紳士の皆さん。ドン・ディエゴ［ＰＡＮ上院議員代表］が封建時代へ回帰するという布告を発表したので、私たち全員が歴史の針がまた前進するように準備しよう。紳士は戦闘に備え、淑女はため息をつきながら待つというのではない。そんな前例主義なんか、くたばれ。歴史の扉を閉めるため、全員でいろんなことをしよう。
　さて、注目！ラカンドン密林のドン・ドゥリート様が話すことに、全員、耳を傾け、心を開き、よく聞くのだ。
　布は布である。だから、少なくとも、手を使って、旗に変えてしまう魔術を演じないかぎり、布は布のままである。布から旗を作るには外にあるいくつもの色が必要になる。だが、われわれが内側から見つけないかぎり、その色は見ることができない。
　だから、いくつもの色を手にして、愛情を込めて、布を織りあげるのだ。そうすれば、布は布でなくなるが、まだ旗にはならない。
　その次には、接着作業に入る。接着作業は、想像されることは異なり、殴ることでも、叩くことでも、引き離すことでも、遠ざけることでもない。きっちり密着させ、合わせ、一体化し、近づけることである。接着とは架け橋である。接着とは、接着するべきことやその場所がないなら、何もしないことである。
　さて、次に登場するのは旗竿である。そう、私の前に登場したデカ鼻が発言のなかで、「旗、接着剤、手」と明言したことは知っている。旗竿はどこにも見えないが、デカ鼻はそれに気づいている。なぜなら、「旗、接着剤、旗竿、手」であると、私は彼にはっきりと言っておいたからである。
　それゆえ、人々はデカ鼻ではなく、私を信じている。
　さて、続けることにしよう。
　次に旗竿が登場する。そして接着剤で染められた布を竿に貼りつけることができる。ついに、誰が見ても、旗はこれにて完成と言うことができる。つまり、これにて基本モデルコースは終了し、次の３ヵ月間コースが始まることになる（当然ながら、もし終了しないのなら、モデルの代わりに材料が残されよう）。
　だが、それは間違いである！まだ、旗は完成していない。布を裁断し、色で染め、旗竿に貼りつけた後、旗を高く掲げる手が必要である。その時、初めて旗ができあがる。
　しかし、多くの色があり、高く掲げられ、優しい風が旗の腰を撫でようとも、たった一本の旗では、悲しいままである。旗にとってもっとも重要なのは、織られた布でも、染められた色でも、旗竿でも、接着剤でもないことは明白である。重要なのは、旗を握り、掲げる時に旗を作る手である。
　一本の手だけでは不完全である。別の手、別の手、別の手、数多くの手が必要である。多くの手、多くの旗が挙がれば、とても多くの色、運動、喜び、明日によって、とても美しく見える。
　だが、挙げた手が数多くあっても、手そのものは見えない。とはいうものの、旗、色、運動、喜び、明日のなかで、本当に重要なのものは、見えなくとも、手なのである。
　ご静聴、大変ありがとう。　
（ここで、ドゥリートの発表は終わり。副司令が言葉をつぐことになる）

　さて、ＵＡＭの仲間の皆さん、われわれが皆さんに言いたかったのは、われわれが旗になれるか、否かではない。皆さんにとって、本当に重要なのは、われわれを高く掲げる手である。
　そして、多くの色、動き、喜び、明日は存在しているなら、ときおり、われわれが想定されている旗ではなく、皆さんの手である

　　出典−www.ezln.org/marcha/20010320c