世界諸国家に対する原住の先住民族と先住民国からの指令。

2007年10月12日、ボリビア・コチャバンバ県チモレ

2007年10月12日、南アメリカの心臓部より、先住民族の権利に関する国連宣言の採択を祝賀するため、｢世界の先住民族の歴史的勝利を目指して｣という世界集会に参集した世界の先住民族と先住民国の代表団は、以下、我々の言葉を表明する。

515年間にわたる抑圧と支配で消滅することなく、我々はここに集まった。我々は民族抹殺、大量虐殺、植民地化、破壊、略奪という政策に対決し、抵抗してきた。
干渉、戦争、社会や環境の災害によって特徴付けられた資本主義という経済体制が押し付けられたことで 、我々の先住民族としての生活様式は脅かされ続けている。
自然を支配し、少数者の手に資本を集中することで容易に利潤を追求し、自然資源を非合理的な開発するという新自由主義の政策の結果、我々の母なる大地は瀕死の状況にあり、我々先住民族は自分たちの領域から追い出され続けている。地球は再び温暖化している。我々は前例のない気候変動を体験している。社会環境の災厄はますます激しく、頻発するようになり、我々は例外なく被害者となっている。
我々を化石燃料に全面的に依存させる状態を作り出してきた西洋文明を維持するための必要量を満たせる清潔な代替エネルギーを見つけ出せないなら、石油時代が終末を迎えてしまうという大きなエネルギー危機が我々を待ち受けている。
この状況は一つの脅威となりうる。新自由主義や帝国主義の政策は、黒色や青い黄金の最後の一滴をめぐって戦争を繰り広げる危機に我々を曝しつづけかねない。しかし、新しい千年紀を、母なる大地を破壊するエネルギーを乱用しない生命の千年紀、均衡と相補性の千年紀にするチャンスを我々に与えるものでもある。
自然資源だけでなく、我々が居住している土地や領域は、歴史的に見ても、その由来からしても、権利としても、つねに我々のものである。こうしたものに対する自決権は、我々の生命、知識、知恵、精神性、組織、医薬品、食料主権を堅持できるようにするための基本である。
新しく始まる時代は、変革の時、パチャクティの時、第五の太陽の時を誕生させている先住民族によって推進されている。
世界の約70カ国に居住する3億7千万人を越す先住民の生存とよき生活の実現にとって基本となる先住民族の権利に関する国連宣言の採択に敬意を表する。20年以上にわたる闘争の末、先住民族の自決、先住民族と先住民族の集団的権利の認知という我々の歴史的な要求に対する回答がなされた。
採択された宣言は、国際法制度のなかで認知され確立される原則と規範とで構成されている。先住民族の基本的権利である。それは、先住民族と国家、社会との新しい関係と全世界での協同の基盤となるべきものである。それゆえ、人権に関する既存のほかの法制度とともに、この宣言は、さまざまな場やレベルにおける先住民の諸権利を保障し保護するための新しい規範的、実践的な基盤である。我々は、歴史的に重要な意義をもつこの重要な制度を履行し実践することを国連加盟国に要求し、先住民族に呼びかける。我々は、先住民族の権利に関する宣言に反対票を投じた政府とその裏表のあるモラルについて非難する。
新しい多民族国家の建設に向けて、アビヤ・ヤラの先住民族の大統領である仲間のエボ・モラレスが先頭に立って推進してきた歴史的営為を支持することを我々は約束する。我々は、国内外からのいかなる脅しに怯むことなく、ボリビアで起きることを監視しているし、地球の人民にこの過程に対して支援と連帯を贈るように求めたい。それは世界の人民、民族や国家が同じ道を進んでいく見本の役割を果たすべきものである。
それゆえ、世界の先住民族ならびに先住民国は諸国家に以下の指令を実行することを要求する。

一、 先祖の知識や知恵を活用し、諸民族間の交流と友好の過程を強化し、自決権を尊重しながら、先住民族の千年に及ぶ生命の文化、アイデンティティ、哲学、世界観や精神性に基盤をおく世界を構築していく。

二、地球規模での温暖化、生態系の危機として現われている衰退しつつある資本主義がもたらしている災厄から母なる大地を救出するため、国や国際的なレベルでの決定を自ら行なっていく。原住の先住民文化は、我々の地球の大地を救済できる唯一の代替策であることを再確認するべきである。

三、資本主義、商品、人間や自然資源の非合理的な開発、エネルギーの浪費、消費主義に基づく現行の発展モデルを、生命、相補性、互酬性、文化の多様性の尊重、自然資源の持続可能な利用を最優先の原則として位置づけるモデルに換える。

四、食料主権に関する国の政策を国の主権の主要な基盤として適用する。その政策では、社会は、飢えをなくし、すべての住民にとって汚染されていない健康で清潔な食料を自然と均衡の取れたかたちで生産、分配、消費する固有の空間や様式である固有文化に対する尊敬を保証するものとなる。なぜなら、食料は生命にとっての権利だからである。

五、バイオ燃料としてエネルギーを創出しようとする計画やプロジェクトを非難する。それは、人民の食料を破壊し、人民から食料を奪うものである。同時に、我々は遺伝子組み換え種子の利用を非難する。なぜなら、我々の千年にわたる種子を絶滅させ、我々をアグロ・インダストリーへ依存させようとするからである。

六、男女の関係の二重性、平等性、対等性という原則のもとで、我々人民の解放闘争の前衛として、原住の先住民女性の役割を評価し、再評価する。

七、 軍備拡張競争を告発しながら、世界の問題や紛争を解決するための指針として、平和と生命の文化を自らのものとし、地球の生命の保存を保証するために武装解除を始める。

八、我々の世界観や精神性、共同体を基盤とする哲学、先祖の知恵を基盤とした通信と情報の体制やメディアを構築するために必要となる公正な法制度の改変を自らのものにする。先住民族の通信と情報の権利の認知を保証する。

九、原住の先住民族や先住民国の生活をよくする政策を構築しながら、生命、健康、インターカルチュラル二言語教育への尊重と権利を保障する。

十、生命に不可欠の要素であり、人類の社会的財産である水を人権として宣言する。水は金儲けの対象ではない。同時に、すべての基本的サービスへのアクセス権を保障しながら、地球の生命を脅かすことのない代替エネルギーの使用を推進する。

十一、差別、周縁化、排除のない国境のない世界を保証するために、人の自由な移動を認める政策を採用しながら、 諸国間の移住の原因となっているものをふさわしい方法で解決する。

十二、国際連合を脱植民地化する。国連本部事務所を世界の民族、国民、国家の正当な願いを褒め称え、代弁している領域に移動する。

十三、先住民族が、生命や人間らしさを救出するため、先住民族が自らの権利や計画を要求しているとして、先住民族の闘争を犯罪と見なし、我々をテロリストとして悪魔と見なし、告発すべきではない。

一四、アメリカ合州国のレオナード・ペルティエールをはじめ、世界のさまざまな場所で収監されている先住民の指導者たちを即時釈放せよ。

闘争は止まらない。抵抗のために抵抗することは終わった。我々の時が到来した。我々は、10月12日を「母なる大地を救う我々の戦いの開始日」と宣言する。
我々の国の政府の枠組みの内であれ外であれ(estando o no estando en el gobierno de nuestros paises)、我々の家族、家庭、共同体、民族を基盤にして、我々は自らの行き先を決定し、その道を歩むことにする。我々は、我々の先祖が我々に残してくれたよく生きることの意志と責任を自ら担っていく。それは、もっとも簡単で単純なものから、もっとも偉大で複雑なものを照射するためであり、水平的なやり方で、すべてのもののなかに、何者にも全体にも、忍耐の文化、対話の文化、そして基本となる生命の文化を構築するためである。
我々の生命の糧となっている死者、英雄や殉死者によって、彼らの掲げたユートピアや希望によって、世界の人民の団結を構築し、生命、人類と地球という大地を救済し、均衡を取り戻すことができるまで、我々のアイデンティティ、我々の組織化の過程、そして我々の闘争を強化していく。
我々は、人類、人民、地球ならびに世界平和のため、よく奉仕しようと絶えず無条件で全力を尽くしている兄弟のエボ・モラレスをノーベル平和賞受賞者として支援することをあらためて確認する。