今日、この山中のわれわれの村ではどこでも、死者たちがわれわれのもとに帰るために歩んでいる。死者はわれわれと再会し、話し合い、耳を傾ける。どの小屋や設営地でも、狭い敷地におかれた供物がわれわれの死者に歓迎の挨拶をしている。死者を招待し、食事を摂り、笑い、煙草を一服し、コーヒーを飲み、踊っている。そう、踊るのである。なぜなら、われわれの死者はとても踊りが好きである。われわれの死者は、踊りだけでなく、お喋りも大好きである。彼らはわれわれにお話をする。われわれのいちばん最初の先祖たちが道を歩くことを教え、習得したように、死者はお話をする。われわれの死者も同じことをする。だから、死者であるわれわれも同じようにしたい。
　われわれの山中では、死者の日は花の日である。昨日、皆さん［一九九九年十月三十一日〜十一月一日にラ・レアリダーで開催されたＥＺＬＮと地域接触調整委員との会合参加者］にお話したのは、光と星と夜明け前のお話だった。今日は、光と花と夜明け前の話をすることにしたい。

　われわれの共同体の最長老たちは語っている。
われわれのいちばん最初の祖先たちも反乱の戦いのなかで暮らしていた。だが、権力者が彼らを征服し、殺してからずいぶん時間が経った。権力者がそうしたのは弱者の血を吸うためである。こうして、弱者はますます弱くなり、権力者はますます権力を持つようになった。しかし、もうたくさんだ！と叫んでいる弱者がいる。彼らは権力者に反抗し、権力者を太らすためではなく、弱者を生かすために、自らの血を捧げている。こんなことが起きたのはずいぶん昔である。
　それ以来、反乱者がいる。それ以来、権力者が反乱者を罰する罰がある。現在では、反乱者を罰するための監獄と墓がある。以前は、罰の家があった。以前、反乱者を罰するための罰の家は七つだった。今も七つあるが、別の名前である。
　われわれの最初の先祖がいた時代にあった七つの罰の家は次のものである。
　暗闇の家の内部には光がない。暗闇の家は完全に暗闇で空っぽである。そこに着いた者は方向を失い、道に迷い、戻ることも行くこともできなくなった。道に迷って死んだ。
　寒冷の家では、凍てつく強風が吹いていた。そこに入ったものすべてを凍らした。だから、人間のなかでもっとも人間的な人を殺していた。
　ジャガーの家には腹を空かした狂暴なジャガーが閉じこめられていた。ジャガーは家のなかに住む者の魂に入り込んだ。その魂をあらゆるものへの憎悪の気持ちで充たした。彼らは憎悪にかられ、憎悪しながら、人を殺した。
　コウモリの家にはキーキーと泣き喚き、噛みつくコウモリが住んでいる。その家に入いる者に噛みつき、信じる心を吸い取った。だから、人はまったく成長せず、何も信じることなく死んでしまった。
　ナイフの家の内部にはよく切れる研ぎ澄まされたナイフがたくさんあった。そこに入った者は、頭、つまり自分の考えをはねられた。そして、何も考えず死んでしまった。物事を理解する力が死んだ。
　苦痛の家には大いなる苦痛が住んでいた。苦痛はあまりにも激しく、大いなる苦痛によって、この家に住む者はおかしくなった。苦痛のため、他の違っているものがいることを忘れた。忘れたため、死者は記憶を失ったまま死んだ。
　無欲の家の内部には虚空が広がっていた。その虚空は、家に入った人の生きる、戦う、愛する、感じる、歩むという意欲を食べ尽くした。人は生きているけれど死んでいるという虚ろな状態になった。意欲なしに生きることは死んだ状態で生きることである。
　以上が、反乱者、動かずにじっとしていることを受け入れない者を罰する七つの家である。彼らの血は権力者を太らせるが、彼らの死は死者の世界に生命を与えている。
　フンアフプーとイシュバランケーと呼ばれる二人の反乱者がやってきたのは、ずいぶん昔である。彼らは夜明け前の狩人とも呼ばれていた。悪はシバルバーという深い穴に住んでいた。そこからよい土地に到達するにはずいぶん登らなければならなかった。
　巨大な悪の館に住む悪の領主たちに対して反乱を起こしたのが、フンアフプーとイシュバランケーだった。フンアフプーとイシュバランケーを悪の領域まで降りてくるようにするため、悪の領主たちは策略を使って二人を連行するように命じた。
　夜明け前の狩人たちは騙されて悪の領域までやって来た。悪の領主たちは二人を暗黒の館に閉じ込めた。そして、彼らに一本のたいまつと二本の煙草を手渡した。悪の領主たちは二人に対し、暗黒の館で一晩過ごし、翌朝、一本のたいまつと二本の煙草をもとの完全な形で返さように命令した。監視人が一本のたいまつの灯りと二本の煙草の火が夜のあいだも点っていることを監視することになっていた。翌日、たいまつと煙草がもとどおりの形で残っていなければ、フンアフプーとイシュバランケーは死ぬことになった。
　二人の夜明け前の狩人は何も恐れていなかった。悪の領主たちの仰しゃるとおりで構いませんと言うと、二人は進んで暗闇の館に入った。そこで、二人は考えを巡らし、すべての色を身体に保管している鳥のコンゴウインコを呼び出した。そして、コンゴウインコに赤色を貸すようにお願いした。二人はたいまつの先端を赤色で塗った。遠くから見ると、火が赤々と燃えているようにした。次に、フンアフプーとイシュバランケーは蛍を呼んだ。二人は二匹の蛍にいっしょにくるように依頼した。そして、二本の煙草の先端に蛍を飾り付けた。こうして遠くからだと二本に煙草に火がついているように見えるようにした。
　こうして夜が明けた。一晩中、たいまつの火は燃え、夜明け前の狩人たちは煙草をたくさん喫っていましたと、監視人は悪の領主たちに報告した。これを聞いた悪の領主たちはとても満足した。フンアフプーとイシュバランケーが一本のたいまつと二本の煙草をもとのままの形で返すという約束を破ったので、二人を殺す口実ができたからである。やがて、夜明け前の狩人たちは暗闇の館から出てきた。彼らは一本のたいまつと二本の煙草をもとのままで手渡した。悪の領主たちはとても腹を立てた。フンアフプーとイシュバランケーを殺すための都合のいい口実がなくなったからである。悪の領主たちは言い合った。
　「この反乱者はとても頭がいい。殺すための別の口実を探すことにしよう」
　「そうしよう」と彼らは言った。
　「今度は、ナイフの館で寝るように連中に命令しよう。考えを切り刻まれ、二人はなすすべもなく死ぬだろ」
　「いや、それでは不十分だ」と別の悪の領主が反論した。
　「この反乱者どもはとても頭がよい。やり遂げることができない重労働を二人に課せばよい。それができないなら、ナイフが二人を殺すことになる。そうすれば、連中を抹殺するいい口実ができる」
　「それはいい考えだ」と悪の領主たちは賛同した。彼らはフンアフプーとイシュバランケーのいる所へ出かけ、二人に言った。
　「二人とも休んでかまわない。明日話し合うことにしよう。だが、おまえたちにはっきりと言っておきたい。明日の夜明け、われわれに花を贈ってほしい」
　悪の領主たちはこそっと笑った。夜のあいだ、花を切るために誰も花園に近づかないようにし、近づく者がいたら攻撃して殺害してもいいと、悪の領主たちは花園の監視人たちに指令していたのである。
　「それで構いません。ところで、皆さんに贈る花は何色がお望みでしょうか？」と夜明け前の狩人は質問した。
　「赤、白、そして黄色だ」と答え、悪の領主たちは付け加えた。
　「はっきりと言っておく。明日、おまえたちが赤、白、黄色の花を贈れなかったら、われわれへの重大な攻撃とみなし、殺すことになる」
　「ご心配には及びません。明日には、赤、白、黄色の花をお持ちします」とフンアフプーとイシュバランケーは言い返した。
　こうして、夜明け前の狩人はナイフの館に入っていった。ナイフはフンアフプーとイシュバランケーをばらばらに切り刻もうとした。二人はナイフを押し止め、話し合おうと提案した。ナイフは立ち止まり、耳を傾けた。夜明け前の狩人は提案した。
　「われわれを切り刻んでも、肉の量はほんの少しです。われわれに何もしないなら、われわれは皆さんにあらゆる動物の肉を提供します」
　ナイフは提案を受け入れ、フンアフプーとイシュバランケーに危害を加えなかった。それ以来、ナイフは動物の肉を切る道具となった。たしかに人間の肉を切るナイフも存在している。その場合、ナイフの犯した罪を償わせるため、夜明け前の狩人はどこまでも追跡するのである。
　こうして、ナイフの館でも、フンアフプーとイシュバランケーは、何一つ欠けることなく穏やかに過ごすことができた。彼らの頭も冴えていた。二人はつぶやいた。
　「さて、悪の領主たちが望んでいる花を手に入れるため、どうしようか？彼らが見張り番に指令を出したのはわかっている。庭園の花に近づいたら、連中はわれわれを殺すにちがいない」
　二人の夜明け前の狩人はじっと考えていた。やがて、ほかの小さなものたちの手助けが必要であることがわかった。そこで葉切り蟻を呼び出して依頼した。
　「仲間の葉切り蟻さん。皆さんにお願いしたい。反乱しているわれわれを支援してください。悪の領主たちはわれわれの戦いを圧殺しようとしている」
　「よく、わかりました」と答えると、葉切り蟻たちは質問した。
　「悪の領主に対する戦いを支援するため、何をすればいいのですか？」
　「皆さんにお願いしたい。庭園に行って、赤、白、黄色の花を切って、ここまで持ってきてください。われわれを攻撃せよという命令が見張り番に出されているので、われわれは庭園に行けない。だが、あなたたちは小さいので、見張り番には見えないだろうし、気づかないだろう」
　「よく、わかりました」と蟻たちは言った。
　「われわれは準備ができている。悪の領主たちがいかに偉大で強力であろうとも、小さいものは悪の領主と戦う方法をもっている」
　こうして葉切り蟻たちは出かけた。その数は多かったけれど、小さかったので、葉切り蟻たちは庭園に入ることができた。見張り番はその様子を見ていなかった。蟻がとても小さかったからである。蟻たちは花を切り、担ぎはじめた。ある蟻は花を切り、別の蟻は花を担いだ。ある蟻は赤色の花を切り、担いだ。別の蟻は白色の花を切り、担いだ。黄色の花を切り、担いだ蟻もいた。あっという間に花を切り、それを夜明け前の狩人たちが待っている場所に担いでいった。花が届いたのを見て、フンアフプーとイシュバランケーはとても満足した。そして、葉切り蟻たちに次のように言った。
　「仲間の皆さん、どうもありがとう。あなたたちは小さいけれど、その力はとても強大です。皆さんに心から感謝します。皆さんの数が多いので、強大なものといえども、皆さんを絶滅できないだろう」
　蟻はがまん強いと言われる。蟻を攻撃するものがいかに強大であれ、蟻を打ち負かすことはできない。
　翌日、悪の領主たちがやってきた、二人の夜明け前の狩人は欲しがっていた花を手渡した。二人はナイフで切り刻まれていなかった。それを見た悪の領主たちは驚いた。だが、フンアフプーとイシュバランケーから手渡された赤、白、黄色の花を見たとき、それ以上にびっくりした。怒り狂った悪の領主たちはさらによい口実を探して、夜明け前の反乱する狩人たちを殺そうとした。

　仲間の皆さん。
　以上が、われわれの死者たちが持ち寄り、われわれに語っているお話である。われわれが言葉の指し示す道を歩めるように、死者たちは彼らの言葉をわれわれに持ち寄る。もともと、われわれは自分たちの死者の上を歩いているからである。彼らのお陰で、われわれは初めて前進できる。
　だから、私は確信する。われわれのいちばん最初の先祖が話してくれたこのお話、つまり、死者の日である今日、皆さんにしたお話はいろんな形で歩むことができる。われわれ小さきものたちは誰でも、このお話の中に自分の姿を見いだせる。
　われわれは夜明け前の狩人となることもある。権力の嘘に抵抗するさまざまな手法を工夫し、抵抗するため、われわれは他の小さきものたちが持っている多様な光を自分たちのところに持ち寄る。われわれはコンゴウインコとなることもある。抵抗を彩るため、われわれは自分たちが持っている多様な色を提供する。われわれはよき理解者となることもある。本来の敵は別でありながら、われわれをライバルと思っている人たちと話し合い、その考えを直していくためである。われわれは蟻となることもある。小さい存在でありながら、死に直面している人のために強固な戦いと支援を展開することができる。
　私は確信する。われわれ、つまり皆さんとわれわれ全員が色、光、そしてよい言葉である。人を説得して直すことができるからである。いっしょになって、大きなものとなる小さな力である。

　　出典−La Jornada,1999/11/6