| 四 紙とインクの橋 |
| あなたに認めているこの文章［不当な死刑判決を受け1983年から収監されている黒人ジャーナリストのムミア・アブ・ジャマル宛ての誕生祝いの手紙、1999/4/24］が提起している内容について話すのはとても難しいことです。メヒコの政府や権力者たちにとって、先住民であること（あるいは先住民に似ていること）は軽蔑、嫌悪、不信、憎悪のきっかけであるとでも、あなたに説明できるかもしれません。メヒコの権力者のいる宮殿に住みついている人種差別主義は、何百万もの先住民族に対する殲滅戦争、民族抹殺の極みまで達しようとしています。その人種差別主義は合州国の権力者がいわゆる「有色人種」（アフリカ系アメリカ人、チカーノ、プエルトリコ人、アジア人、北米のインディオ、そして味気ないお金と同じ色をしていないすべての人種）に対して展開しているものとよく似ている。それにあなたは気づかれるものと思っています。 私たちも「有色人種」（アメリカ合州国で生活し戦っているメヒコの血を持った私たちの仲間たちと同じように）です。私たちは「コーヒー色」です。それは大地の色であり、私たちは大地から歴史、力、知恵、希望を汲み取っているのです。しかし、戦うため、私たちは自分たちのコーヒー色に他の色、つまり黒色を加えています。私たちは自ら表現するため黒い目出し帽を使っています。そうしないと、私たちの姿は見えないし、声は聞き入れられません。黒色が体現するものについて私たちに説明してくれたひとりのマヤ先住民の古老の助言によって、私たちは覆面を黒色にしました。 この知恵のある先住民の名前は老アントニオです。一九九四年三月、サパティスタの反乱する大地で亡くなりました。彼から両肺と呼吸を噛み取っていた結核の犠牲になったのです。老アントニオは、黒色が光となり、黒色から世界の天空を彩るすべての色が誕生したことを私たちに語ってくれました。ずいぶん昔（時間というものがまだ勘定されていなかった時代）、いちばん最初の神々が世界を誕生させる任務を引き受けたというお話を私たちにしてくれました。彼らが集まったある会合において、世界が生命と動きを持つためには何が必要となるのかがわかりました。そのためには光が必要だったのです。そこで、神々は太陽を創ろうと思ったのです。そうすれば、日々が動き、昼と夜ができ、戦う時間と愛し合う時間ができ、昼と夜とともに歩けば、世界も歩みだすだろうと考えたのです。とても大きな焚火を囲みながら、神々は合意をえるための会合を開いたのです。自分たちの誰か一人が、自ら犠牲となって焚火に飛び込み、火に変身して天空まで翔け昇らねばならないことがわかりました。神々は太陽になる仕事は黒色の任務であると考え、黒色は用意ができていると言って、火に飛び込み、太陽になりました。それ以来、光と動きが存在するようになったのです。戦う時間と愛し合う時間ができたのです。肉体は、昼のあいだは世界を創るために働き、夜になると暗闇から光を取り出すために愛し合うのです 老アントニオはこのようなことを私たちに語ってくれました。それが私たちが黒色の目出し帽を使っている理由なのです。ですから、私たちはコーヒー色であると同時に黒色なのです。しかし、私たちは黄色でもあるのです。なぜなら、この大地を歩き回った最初の人々は、真の人間となるためにトウモロコシで創られたことが私たちに語られてきたからです。そして、私たちは、尊厳ある血が命ずるように赤色でもあり、私たちが翔ぶ空のように青色でもあり、私たちの棲家であり要塞でもある山のように緑色でもあるのです。そして、私たちは自らの未来の歴史を書き記すための紙のように白色でもあるのです。 私たちは七つの色なのです。世界を誕生させた最初の神々が七つだったからです。 これがかつて老アントニオが私たちに語ってくれたことです。今、メヒコ南東部の山中からあなたのもとへと延びているこの紙とインクの橋がもたらすものをあなたにわかっていただくために、私はこのお話を語っているのです。
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