| 三 種を播く |
| われわれは種を播く準備をすべきである。われわれは雨を降らさねばならない。チャッコブ、すなわち雨の神々は、セノーテ［ユカタン半島のカルスト地帯にある湧泉］から出ると天空に集合し、水の入った聖なる瓢箪を携え、馬にまたがり、大地のあちこちに雨を降らしていった。それは生命をもたらす雨を万物が享受できるようにするためである。われわれも同じことをすべきである。 雨が降らないなら、われわれは先祖のようにしゃがみ、雨の降る前の蛙のように合唱し、嵐の風が吹きつけるように木の枝を揺さぶるべきである。そして、誰かひとりが、稲妻の杖と聖なる瓢箪を携えたクヌ・チャック、つまり雨の主神の役を演じることになる。 われわれは種を播き、自分自身の根を大地にしっかりと張らすべきである。もはや、石が柔らかく、口笛を吹きながら勝手に動いたり、トウモロコシ畑を開墾するためにあくせく働いたりしなくてもすみ、一粒のトウモロコシで家族全員が養うことができた時代ではなくなった。 指導者がチチェン・イツァーで異邦人に打ち負かされた結果、良い時代は終わり、悪い時代が始まったのである。昔の指導者はトゥルムから東に海底の下まで伸びているトンネルに潜り込んだ。こうして異邦人、ツルが権力を掌握した。今まさに、われわれの土地で理性がもう一度支配権をもてるようにするため、われわれは帰還すべきである。言葉の種を播きながら、われわれは帰還するだろう。 われわれの大地はわれわれそのものである。われわれは自分たちがどんな存在であるかをよく知っている。われわれは大地そのものである。 かつて、種を播く畑、われわれが耕作するトウモロコシ畑は四つの精霊によって守護されていた。また、集落を守護するために、別の四つの精霊がいた。そして、集落の四隅に建っている十字架ごとにひとつの守護精霊がいた。 マセウァレス、太古のわれわれは七つの方向をもっていた。最初の四つの方向はトウモロコシ畑、または集落の四つの隅だった。五番目は中心である。それぞれの共同体は中心を十字架、また一般的にはセイバの木で示すというのが習わしだった。六番目と七番目は上と下だった。 畑と集落のそれぞれ四つの守護精霊のほかに、各個人も守護精霊をもっていた。四つの隅と一つの中心という五つの点を示すため、われわれの先祖は十字架を使っていた。時間が経つにつれ、五番目の点が立ち上がり、四つの隅が五つの隅になり、やがて五つの頂点からなる星になった。その星は人間や作付けけされた畑の守護精霊を表わすものだった。 人々の守護者にして心であるボタン・サパタは、言葉の守護者にして心でもある。ボタン・サパタは、人間、人間であること、すなわち彼自身を表わしている五つ頂点をもつ星である。今まで、われわれは語り合い、耳を傾けてきた。だから、人々の守護者にして心であるボタン・サパタの陽気な心はいつも以上に機嫌がよい。
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