今回は、サパティスタ支持基盤組織が抵抗し戦っているサパティスタ共同体がどのような状況にあるかについて少しお話しします。

これからお話しすることは、集落の責任者、委員会の責任者（保健、教育、若者など）、自治当局者や組織の責任者などサパティスタの同志から寄せられた情報に基づくものです。同時に、地下革命委員会の同志とともに、それが虚偽でないか、よく見せるため、悪いことを隠そうと内容を変えていないか、チェックしたものです。この報告作業は第6委員会の私達の同志、支持し連帯している人々に嘘をつくためのものではありません。あなたたちや関係者、誰にも嘘をつくものではありません。
私達がよくなかったら、私達はそれを明確に言います。それは、皆さんの場所や時間で起きていることが危惧されるのに、さらに悲しませようという気持ちからではありません。私達が明確に言うのは、それが私達の説明や情報提供の仕方だからです。つまり、私達が皆さんに言った針路を歩んでいるのか、それとも以前に自己批判したのと同じような誤りを犯し、まったく別の方向に踏み出しているのか、皆さんに知ってもらうためです。一方、私達がうまくいっているのなら、私達の気持ちと一体になって喜んでいただくため、そのことを皆さんに知ってほしいのです。

私達がうまくいっているか、よくないかは、どのように分かるのか？ 私達サパティスタにとって、それはとても簡単なことです。言葉を発し、命令し、何かを実践し、止めるのは、すべて人々なのです。誰かが悪しき道に入ったら、ただちに、皆でその人物にシィ、シィと警告し、道を修正し、悪い道から抜け出させるのです。
それが私達の自治であり、それが私達の歩む道です。私達は道を歩み、道を探し、過ちを犯し、自己修正していくのです。
要するに、私達は皆さんに真実を伝えます。嘘には、皆さんは相当嫌気がさし、退屈していることでしょう。真実は痛みを伴うこともあるが、つねに気持ちを楽にさせるものです。
私達は、悪しき政府がこれまでしたように過度に自分を飾り付け、私達を訪問した人々に好印象を与え、実際に基礎の部分で起きていることを見えなくしたくないのです。こうした厚化粧は、いかに政府が偽りのものであるかを明白にするだけです。だから、それなりに知性のある人でさえ、現実を直視できなくなるのではないだろうか？そこで見た現実に対して、どのように意見表明するか、無視するかは、それぞれのやり方があるでしょう。それは別次元の問題で、それぞれの責任となります。

では、これ以上のファンファーレは抜きにして、これから始めます。皆さんにこれからお話しすることは、サパティスタの小さな学校の教科書で説明されたこととは別のことである。あなたが共同体や都市部【サンクリストバル市のCIDECI】で開催されたサパティスタの小さな学校に参加せず、教科書が言っていることを知らないのなら、その教科書を読むことを勧めます。そうすれば、自治構築の過程がどのようなものだった理解できるでしょう。これから紹介するのは新しい現象で、一・二年前【2013・14年】にはなかった新しい事態です。サパティスタ運動の成長は継続しています。若い世代が次々と参加しているます。

健康部門に関しては、相当数の男女の同志が参画している。それがわかるのは、予防対策が多く取り組まれ、自治健康促進員の提供する対応によって、自治診療所に来る人が減っていることである。病気になる人が減っているからである。自治サパティスタ診療所に今も変わらず来ているのは政党支持者である。

教育部門に関しては、初等教育は平等に受けることができる。現在、中学校や高校を求める共同体からの新しい要請が見られる。数管区には中学校があるが、全管区にあるわけではない。今では、上級の教育を要求する若者が増えている。ワークショップではなく、学問や芸術のより上級の勉学を要求している。しかし、既存の大学に見られる資本主義的な枠組みでの勉学ではなく、私達独自の勉学の枠組みである。これに関しては極めて不十分である。

経済部門に関して、集団労働と個人労働（トウモロコシ、フリホール栽培、コーヒー生産、養鶏、バナナ栽培、牧羊、牧牛、小規模売店、養蜂、蔬菜栽培、家畜や他の生産物の売買）があり、それが継続していることは言わずもがなである。昨今、観察できるのは生産が増大し、若い世代の栄養や健康が改善していることである。
いくつかの管区では、自治健康促進委員はエコー診断、薬剤、内科、歯科、産婦人科という部門に関する能力養成を受けている。地域の健康予防キャンペーンを展開している。ある管区では、家畜の集団労働で得られた利益で、検査器具一式とエコー診断器具を購入した。すでにこうした器具の操作技術をもつ男女の同志がいるが、それは、あるカラコルの健康促進員が別のカラコルの健康促進員に教えるとか、健康促進員相互の研修の成果である。
さらにもう一つの診療病院が建設中である。そこでは、近いうちに、ラ・レアリダーやオベンティックで行われている簡単な外科手術をすることができるだろう。
農業部門に関しては、ミルパ耕作と牧畜のコレクティボがかなり増加している。その利益から、診療所の器具や薬品の購入だけでなく、トラクターも一台購入できた。
商業部門では、雑貨協同組合が経済的自立を達成し、サパティスタ家族のために低価格を維持してきた。それができたのは、基本的消費物資の価格高騰で蓄財する人がいなかったからである。自治売店にはブランドや最新流行の服はないが、スカート、ドレス、ブラウス、パンタロン、シャツ、靴（大部分は自治製靴工場製作）、各自が着用する下着も揃っている。
生産や流通のコレクティボで最も前進しているのは女性同志のものである。数年前から、司令部、部門委員会、叛乱兵士（そう私達も生産のため労働し、収入を得ている）の集団労働の成果は、それぞれの自治行政区に一定量を割り当てられ、支持基盤組織の女性同志たちが自分たちで決める事業で集団的に運用することになっている。女性たちは男性たちより上手な管理者であるという結果が出ている。なぜなら、ある行政区では、女性同志たちが立ち上げた牧畜コレクティボを成功に導くとともに、そこで育成した乳牛を女性コレクティボのある別の集落と折半するまで前進している（折半とは、サパティスタの同志が手にしたものの半分を別の人に与えることを意味している）。
雑貨販売協同組合でも似たようなことが観察できる。地域や集落にある別の協同組合や個別の女性同志に貸付金を提供している。
どの自治行政区においても、穀物耕作か牧畜の協同組合がある。どの地域でも利益を生み出している集団労働が存在している。たとえば、この前の祝賀事業で、各地域は、祝祭で消費し、楽団に提供する雌牛を手に入れるために協同した。
大多数の集落で集団労働が行われている。いくつかの集落では男性たちの集団労働は行われていないが、女性たちの集団労働が行われている。男女の二つの集団労働グループがある集落もある。個人レベルでも、全員がよい生活を求めて戦いを展開し、前進できている。民兵や叛乱兵士も、自分や人々の自立を目指し、生産部門の集団労働に従事している。
オベンティックのカラコルには自治トルティーリャ製造所がある。皆さんの場所での価格は知らないが、オベンティックでは1キロ当たり10ペソである。マセカ【小麦粉35%混入のトルティーリャ製造用の粉】ではなくトウモロコシから作ったものである。公共輸送サービスもある。オベンティックでトルティーリャ購入のための特別便がある。オベンティックのカラコルがあるチアパス高地では、トウモロコシが生産されない。トウモロコシは密林地域で生産され、サパティスタ家族が仲介者抜きで、適正価格で購入できるように集団労働グループ間で取引される。その取引のため、名前を明らかにできないが篤志家が善き統治評議会に寄贈してくれたトラックが使用される。篤志家の名前は私達の誰もがよく知っている。
多くのサパティスタ集落では、ほぼ半分が集団労働で行われ、残りは個人労働となっている。サパティスタでない集落では、大部分が個人労働となっている。集団労働が推進されてはいるが、他の人を搾取しない個人労働も尊重されている。集団労働、個人労働のどちらも、堅持されるどころか、前進している。
集団労働は、それぞれの場所の状況に応じて、組織されている。集落には複数のコレクティボがある。男性、女性、若者のコレクティボがある集落もある。地域や行政区単位のコレクティボもある。管区、つまり善き統治評議会単位のコレクティボもある。かなり前進できたコレクティボは遅れているコレクティボを支援する。いくつかの地域で見られるように、食糧生産の集団労働は自治中学校に設置されている寄宿舎の食料をまかなうものである。

前進したことについて私達が皆さんに語ってきたことは、サパティスタの総司令部からの指令で始まったものではありません。ごく少数の人の頭にあった構想からではなく、人々がお互い分かち合うことから始まったものです。こうした分かち合いのなかで、人々はさまざまな労働、その進展、問題や錯誤について語り合います。そこから多くの新しいアイデアが生まれ、お互いに交換し合うのです。つまり、男女の同志は、お互いに学び合うのです。
司令部である私達も、私達サパティスタ同志から多くを学んでいることもはっきりと言うべきでしょう。
私達が見聞したことは、すごいことで、驚異に値するもので、この前進の総体からどのようなことがもたらされるか、私達には分かりません。

今回は、準軍事組織の再武装、連邦軍の地上や航空パトロール増強、あるいは悪しき政府が私達を破壊するために展開している悪事全般について、皆さんにお話しすることはありません。皆さんにその詳細を語るつもりはありません。あなた方も安楽な状況になく、日々、あらゆる場所、時間に、抵抗や叛乱は攻撃に曝されていることを私達はよく知っています。それにもかかわらず、皆さんは叛乱し、抵抗を継続されています。
しかし、皆さんにお話ししたあらゆる現象は、襲撃、攻撃、迫害、誹謗、沈黙という共犯のさなかで起きていることを、私達は分かっています。まさに、戦争のただ中です。
今がそうであるように暗闇の時代でも、「希望のセールスマン」が登場している。サパティスタは、「新制憲運動」【ラウル・ベラ司教提唱の市民・民衆制憲運動】を自称する聖職者や在俗者、俗人の愚かな言動に取り込まれるつもりはありません。「私達を救済する」という運動は、批判しているはずの旧態依然たる抑圧の手法を使っている。EZLNに関して表向きは支持すると嘘をつきながら、かなり前にその前衛という伝統を放棄した時代遅れの「前衛」の支援で歴史を再編しようとしている。
EZLNは小さな鏡の販売をいっさい支援しない。私達は1521年ではなく2016年にいるのである【侵略者によるビーズや鏡と交換に資源・領土の簒奪を暗示】。もう、目覚めるべきである。

第6委員会の仲間の皆さん。全国先住民議会の兄弟の皆さん。今起きていること、あらゆる待ち伏せが予想されるなか、私達サパティスタは、よくない事態、これから起きることに備えている。私達は怖れていない。何も怖れていないのは、私達が無鉄砲だからではない。私達は仲間の同志たちを信頼しているからである。世界中の天空や大地を襲っている暴風に対して、サパティスタ支持基盤組織は成長しているようにさえ思われる。今は、その能力、知恵、想像力、創造性が光り輝く時のようである。

実際、情報提供や説明のレベルを超え、私達が望んでいるのは、こうした言葉ですべての皆さんを抱擁し、いかに場所と時間が隔たっていようとも、この世界の片隅に皆さんを忘れはしない仲間がいることを皆さんに記憶してもらうことである。
しかし、何もかもうまくいっているわけではない。皆さんにはっきりと言っておこう。私達はひとつ欠陥があることを承知している。それは女性サパティスタが男性サパティスタより前進していることである。つまり、同じペースで前進していないということだ。
男性が家庭に収入をもたらす唯一の存在であった時代はますます遠のいている。今や、数管区では、女性コレクティボが男性に仕事を提供している。私達が近く発表する予定のイベントにおいてバシッとキメルためのシャツやズボン、バンダナ、櫛を購入するお金を、女性が男性に提供することになるサパティスタの家庭は少なくはないだろう。
ひょっとしたら、私達は薄汚れ、醜く、イケタものではないだろう。しかし、これだけは確かである。私達はバッチリ髪を決めている。

メヒコ南東部の山中より
叛乱副司令モイセス　叛乱副司令ガレアーノ
メヒコ、2016年2月