メキシコと米国における別のキャンペーンに一翼を担っている組織であるEZLNの老若男女からの挨拶を受取ってください。

我々は米国人民ではなく、ジョージ・W・ブッシュ政府の外交代表機関の前にいる。
地球全体に死と破壊をもたらしてきた米国の悪しき政府のメキシコ事務所の前である。
この事務所は北米の巨大資本がメヒコの大地と天空にもっている強欲を体現している。
この事務所から、PANとビセンテ・フォックスという支配人が率いるメヒコ政府の基本政策が決定されている。
外国資本に奉仕する下僕という点で、政府は、PRI、PRD、PT、コンベルヘンシア、PANAL、環境緑の党といった他の諸政党と軌をいつにしている。
上のメヒコにいる政治屋がかしずく神殿である。
新自由主義の近代的教会であり、多国籍企業の事務所から、上の連中が信仰している宗教を導いている。
それはどのようなコストとであろうと最大の儲けを得るという宗教である。
メヒコの行政・立法・司法の三権力を牛耳っている事務所である。
この数年間、この地球の大多数の住民にとって、北米の旗が、専横、略奪、権威主義支配、破壊、屈服、軽蔑、死のシンボルとなるように仕向けてきた政府の事務所である。
この政府は、アメリカ合州国の諸州のシンボルである星を地球全体で征服戦争を繰り広げるお金のシンボルに変えている。
この政府は、二〇〇一年九月一一日の襲撃という悲劇を自国軍がイラクの土地を侵略するためのアリバイに変え、今では、イラン、北朝鮮、キューバ、ベネズエラを脅迫しながら、世界全体を核戦争による大殺戮という危機の淵に追い込んでいる。
この事務所は、ラテンアメリカ人民の憎しみを全面的に掻き立ててきた政府の代表である。
この政府は、英雄的なキューバ人民に対して、不法で、正当性のない、非人道的な経済封鎖を続けてきた。
この政府は、ラテンアメリカの人民、とりわけベネズエラ人民の主権を護ろうとする決意に対して直接介入しようと画策している。

我々は、サパティスタとして、叛乱し尊厳を有するメヒコの先住民として、二つのメッセージを送るために、様々な組織、集団、コレクティボ、家族や諸個人に属するメヒコ人とここに結集している。アメリカ合州国のそれぞれの宛先に、二つのメッセージが届くことを期待する。

最初のより重要なメッセージは、我々と同じような人々に向けたものである。
ラテンアメリカの大地に据えつけられた資本主義体制によって尊厳ある労働に対して支払うことを拒否されてきたお金を求めて、不穏で野蛮な北の国に向けて移住せざるをえなかった男女のためである。
ラテン系であるために、搾取に曝され、この国、アメリカ合州国と呼ばれている国は世界中からの移住者によって創られてきたことを今では完全に忘れようとしている政府の人種差別主義的な軽蔑に曝されている人々のためである。
このシステムやそれを統治している連中が住民の圧倒的大多数に尊厳ある生活を保障できないため、先住民であれ、メスティソであれ、家族や自分の歴史的、文化的ルーツ、共同体、祖国をあとにしなければならないメヒコ人たちのためである。
リオ・ブラボの北側で、記憶を失うことなく、生活し、働き、闘っているメヒコ人、チカーノのためである。
同じ血、色、ルーツをもった人々を助けることができる何かを手に入れようと、すべて、とりわけ生命を危険に曝すとともに、メヒコ共和国と呼ばれる下の国の人々にとっての悪夢の中に留まってきた人のためである。
こちらで は、ナカ、インディア、虱だらけ、汚い、見苦しい、悪いなどの、権力者どもが我々のような下の世界にいる人間の存在に対して抱く吐き気とともに使っているあだ名で呼ばれる人たちのためである。
彼の地、すなわち、区別されることなく、自由、民主主義、正義が行き渡っていると想定されている国では、フリホール豆、ブラウニイ、エイリアンなどの人種差別的な同義語で呼ばれている人たちのためである。

移民労働者の同志の皆さん。
我々は、ファシストの上院議員センセンブレナーが提案した法案が、アメリカ合州国におけるラテン系移住者の労働を犯罪にしようとするものであることをよく知っている。 この法案は、何百万もの不法移民を犯罪者であると宣告し、北米人民の生活条件が悪化している責任が、働くために別の国にやってきた人ではなく、本当の犯罪者は、星条旗の帝国から、北米を含め、世界中の労働者に情け容赦なく強制されている資本主義システムであることを隠蔽しようとするものである。
この人種差別主義を法律のレベルまで高めようとされているため、何十万もの不法入国の労働者が市民による平和的な方法で動員する事態が起きているのである。我々の国と同じように、皆さんの動員は、上の世界にいる政治屋連中の利益に叶うように、彼らに利用されてきた。 連中は皆さんの正当な大義の正当性に驚愕し、今では、何千、何十万、何百万もの憤怒に対して弾圧で対応すると脅迫している。
そちらにある上の右の世界、ホワイトハウスや連邦議事堂では、大多数の暴力的追放することと引換えに、ごく限られた数の移民労働者の合法化を可能にする一連の法案を承認するよう圧力がかけられている。
この一連の法律においては、国境警備隊や｢入国管理官｣の増員、一二キロに及ぶ国境の壁の建設、さらには10の不法入国者収容所の新設が計画されている。さらには、英語を話すこと、二千ドルの罰金の支払い、義務的な兵役奉仕など、不法入国者の合法化の条件を厳しいものにすることが目論まれている。
この強制徴兵によって、今では、相当数の不法入国者が、イラク、アフガニスタン、そして今後は、イランや北朝鮮に派遣され、貧しい人民に対してお金の支配者たちが仕掛けている戦争で戦うことになり、生命を失うことになる。
この法案は、少なくとも、二〇〇四年以降、米国に入国した不法入国者全員の国外追放にゴーサインを出すだろう。その数は約200万に達し、そのうち120万人がメヒコ人である。
米国における不法入国者、とりわけメヒコ出身の労働者の闘いは、完全に正当なものであり、我々の敵である資本主義の偽善性を暴露している。自由市場が喧伝する託宣は、人、つまり労働者の自由な移動によって脅かされている。それにもかかわらず、 関税の撤廃、商品の国内市場の開放、資本の自由な移動、利益の自由な国外移転は推進される。それに対し、市民の自由な移動はけっして認めようとしない。

米国にいる移民労働者の同志の皆さん。
先住民として、老若男女として、EZLNのサパティスタとして、我々は皆さんの正当な闘いを支援する。サパティスタとして、我々はメヒコの大地で流通している北米の製品に対する不買運動に結集する。
さらに、EZLNのサパティスタとして、メヒコでは、メヒコ人民、別のキャンペーン賛同者全員に北米の全製品のボイコット支持を呼びかけたい。
EZLNは、一九九四年以来、サパティスタの先住民共同体の闘いを支援するための動員、そしてイラクの戦争に反対する動員をかけてきた北米の人民、エマ・ゴルドマン、ジョン・リード、エテル・ローゼンベルクとジュリアス・ローゼンベルク兄弟、マルコムX、マルティン・ルーサー・キング、ムミア[ブラック・パンサーの指導者]、レオナルド・ペルティエル[アメリカインディオ運動の指導者]の後継者たち、我々と苦悩や叛乱精神で結ばれている北米のインディオの諸民族、ならびにすべてのチカーノ社会に特に呼びかけたい。不法移民労働者が繰り広げているこの正当な闘いを支援してください。
さらに、向こう側、つまりリオ・ブラボの北側で闘っている我々の兄弟姉妹の皆さんに言いたい。我々、この別のキャンペーンを展開している我々は、我々の大地の上、天空の下にいるすべての人にとって、住宅、土地、労働、食料、健康，教育、正義、民主主義、独立、情報、文化、自由、先住民の権利と文化への敬意、そして平和が存在するように闘っている。
我々は別のメヒコを目指して闘っている。労働者に労働者であることを放棄させ、現在、この地で手に入れられない生活を探して、わざわざ外国に赴くよう 強制することのないメヒコを目指している。
自由、正義、民主主義のあるメヒコを！皆さんのような、そして我々のような、慎ましく気取らない人々のためのメヒコを！ よりよきメヒコを！怪獣のはらわたの中で闘っている移住労働者よ、お元気で！北米の自由と正義を求める闘いよ、がんばれ！
では、よろしく。お元気で、そして我々を結び付け、培っている歴史が、我々を分断している死の国境を横切るように。

別のメキシコ市、ヤンキー大使館前にて 、叛乱副司令官マルコス、メヒコ、二〇〇六年、五月一日.

追伸−この公的書簡の冒頭で、二つのメッセージを届けると、我々は発言した。二番目のメッセージはジョージ・W・ブッシュの政府宛のものである。彼の少ない知性でも理解できる用語に翻訳できる人物が、彼のもとにいるだろう。
そこで、我々としては、ここメヒコには、すでに別のこと、別の道が存在していることを知らせておきたい。その道は、我々、下の左側にいる何十万ものメキシコ人が建設している道である。この全国的運動は、我々の国において、これまで独立国家としての主権を売り渡してきた悪しき政府をきっと打倒するだろう。それがメッセージである。
だが、それだけではない。我々は自分たちの国から、人間だけでなく、自然、我々の大地、水資源、森林、生物多様性、歴史、文化を単なる商品に変えてきた金持ち連中や権勢家どもを追い出すだろう。 我々の祖国を征服している連中を追放するだろう。我々は、米国資本家を含め、巨大な資本家をメヒコから追放するだろう。
我々の天地では、星条旗は翻ることはない。我々の天地では、サボテンにとまり蛇と戦う鷲が描かれた三色旗、尊厳に満ちた新しい旗が翻る。
では、今一度、よろしく。挨拶は抜きだ。とりあえず、荷造りを始めねばならない。

サパティスタを代表して、叛乱副司令官マルコス