「人々の意志に従って統治する」四年間

1997年５月２５日

ＥＺＬＮ　反乱軍事司令官モイセス

　サンペドロ・デ・ミチョアカン反乱行政地区の仲間の皆さん。
　本行政地区の新旧当局者の皆さん。
　あなたたち、サパティスタと非サパティスタの人々に対して、われわれの言葉を贈ることにする。

　四年前から、われわれは金持ちどもの政府がわれわれを統治することを認めてこなかった。今、あなたたちの当局者を任命するのは、あなたたち自身である。ここにいるあなたたち、男性と女性、こどもたちである。あなたたちは、喜びとともに、前任の当局者を見送り、この反乱行政地区において人々の意志に従って統治する新しい当局者を迎えている。
　メヒコ全土においてまだ実践されていないのは、まさにこのことである。しかし、とりあえず、われわれは、先住民族は、われわれの習慣や文化に従って、自らの手で統治する形式を実践しようとしている。そう、今や、自らの手で統治し、不正行為を処罰する法律を定め、実行しているのは、戦う先住民族である。今や、人々は誰が行政地区の当局者であるかを知っている。成功や失敗を当局者にむかって言うことができる。約束を実行せず、人民のために統治しない場合、当局者を更迭し、別の人物を据えることができる。
　このような形でメヒコのすべての人々が統治されることこそ、われわれが夢想し、望むことである。あらゆる任務を実行すれば、すべての運動が勝利の日を迎えられるように、メヒコ全土でも、そのような時が訪れるだろう。その任務とは、祖国のために生きるか、さもなくば自由のために死ぬことである。
　いつの日か、メヒコにおいて、人々の意志に従って統治する政府ができるだろう。
　これまで、より小さいものだが、われわれは現在のような統治の在り方を実践してきたが、もしメヒコの人々が望めば、やがては全国レベルで実践されるだろう。
　この活動、われわれが現在担っている任務のように、たとえ小さいものであっても、自らの手で組織する活動は、じつに大きな課題である。法律に書かれていること、つまり人々の言葉を実践するためには、さらに組織化を進め、つねにより良いものにしなければならない。人民による人民のための本当の正義を実現すること、生きるための労働が平等な形態になるために必要な新しい法律制定もそうした活動である。
　同志の皆さん、われわれはこの活動を真剣に考慮してきた。つまり、どうすれば最善の活動ができ、生活し、助け合えるかを考えるという活動と努力である。それが見えないなら、何の保証もなくなるだろう。メヒコや世界が、われわれが誰なのか、何を望み、なぜ戦っているのかを知る日が訪れることを確信しながら、われわれは活動し、隠密裡に組織化し、黙々と準備をしてきた。われわれはその時代のことを忘れない。われわれは今も同じである。保証がないかのように、現在も、われわれは活動し、自らを組識化し、学んでいる。しかし、いつの日か、メヒコの人民は理解するだろう。わわわれは人民による人民のための政府を、本当に心の底から望んでいる。人々の意志に従って統治することを実践する。そのこと、つまり、現在の金持ちどもの政府のように盗人どもがトップに居座ることなく、われわれが自らの手で統治できることを示すことこそ、われわれが果たすべき約束の重みである。

　われわれの尊厳は降伏し、売り渡されるものと思い込んでいる連中は、恐ろしい軍備拡張をさらに推進し、われわれを脅迫し、この道を閉ざそうとしている。しかし、われわれの尊厳は降伏し売り渡されることはない。抵抗し、必要なことは何でもするだろう。つまり、われわれの未来がこの悪い政府と国家政党システムの剥き出しの獣性にいっさい苦しまないようにするためなら、必要とあれば、死ぬことさえもいとわない。
　だから、われわれが責任を預けている同志たちをこれまで以上に手助けすることが必要なのである。彼らも食べ、衣服を身につけ、家族をもっている。彼らが生活するために必要なものの問題を解決できれば、同志たちも人民のために活動を続けることができる。行政地区の人々は、この活動、もっとも適切な活動の在り方を合意に基づいて、解決していくだろう。人民の当局者であるわれわれ全員が考えを巡らし、戦う義務をもつのである。人民とすべての行政地区が生活の在り方を改善できるように、活動し、必要なことを解決する方法をみつめなければならない。悪い政府はそのようなことを考えはしないし、われわれにそのことを教えようともしない。悪い政府は、われわれの住んでいる渓谷部において命令し、われわれを殺すために、武器を購入し、兵士を集めつづける。われわれのことを理解しようとしない。
　われわれは生きたい。そして、人間として生きるために戦っている。今や、この悪い政府に期待する時ではない。自らの手で統治するため組織化し、われわれの活動を通じて、われわれが必要とするものを解決していく時である。この悪い統治者どもからわれわれ自身を防衛するためにも、自らを組識化する時である。

　対話であれ戦争であれ、連中が何を望んでいようとも、ＥＺＬＮは、人民の意志に従って統治している人民のよき当局者たちを防衛する。われわれが武装しているのは、そのためである。われわれの武器の照準は、人民の労働を食い物にして私腹を肥やしている悪い統治者どもに向けられている。われわれは、「もうたくさんだ」と叫び、あなたたちと協力し、自らの手で統治し、生きていくことを進めてきた。われわれがここにいるのは、われわれの要求を実行するよう、悪い政府に対して義務づけていくためである。その要求を実現するためにわれわれはやむなく武器を手にすることになったのである。１３項目の要求が実行されないかぎり、われわれは休息するつもりはない。われわれはそのためには犠牲が必要となることを知っている。しかし、空腹や病気で死ぬより前に、何か良いことをするほうがましである。

　われわれは、ＥＺＬＮとまだ合意できていない仲間の皆さんに言いたい。ＥＺＬＮはわれわれを最善の形でまとめ、行政地区として組織化している。政府はあなたがたに何でも与えてくれるという考えをぜひとも捨ててほしい。政府は、 504年以上、われわれの生活を改善しなかった。何も実行しないまま、今も待たせつづけている。政府は、死ぬことを余儀なくされている仲間たちを手助けはしない。人民による政府でない以上、それは政府ではない。
　サパティスタ、非サパティスタを問わず、誰もが1994年１月１日に始まった戦争に苛まされてきた。現在では人が良すぎる兵士でも、いざ戦闘の時となると、オコシンゴの戦闘で、どのように市民を殺害したかを思い起してほしい。悪い政府の命令を実行するうえでは、それは良い行為とされる。

　仲間の皆さん。いま行なっている行事は、われわれの闘争、１月１日の戦いで倒れた同志たちの闘争、そして今日も武器を手にしている人々のおかげで実行できたものである。
　サパティスタの人民、そして闘争のなかで意識を形成しつつある仲間に感謝したい。
　政府に戦闘を停止するように働きかけたメヒコの人民の勇気に感謝したい。
　この行政地区議会の新しい当局者の皆さんには、人民の信頼、そしてこの行政地区を統治する力を獲得したことに対して、おめでとうと言いたい。そして、皆さんにお願いしたい。あなたたちが統治する期間、人民による本当の民主主義を実践し、人々の意志に従って統治するなかで、正義と平等が実現するように努めてほしい。そうでなければ、人民の信頼と統治する力、そしてＥＺＬＮの支持を失うことになるだろう。この行政地区において、あなたたちが地区の団結力を強化し、あなたたちの政府によって、抵抗と尊厳が強化されることを望んでいる。
　退任する当局者の皆さんには次のことを言いたい。人々の意志に従って統治する時、人々に対する義務を遂行することは尊厳にみちたものとなる。それは充足感である。そう、すでに義務は遂行された。犯した誤りは、新当局者が同じ誤りを犯さないために役立つだろう。あなたたちの努力は認められた。

　活動し、希望を組織する男性と女性の喜びよ、ばんざい。
　祖国のために生きよう、さもなくば自由のために死のう。

　ＥＺＬＮ総司令部を代表して　反乱軍事司令官モイセス
　メヒコ、1997年５月