人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会 集会呼び掛け
ＥＺＬＮ、一九九六年五月
大地という惑星に（あるいはそこにいるものに）
儀礼的な挨拶、そしていつも通りのさまざまなものを受け取ってほしい。われわれは皆さんを「人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会」にお招きする。皆さんをお招きするため、われわれは次のような創意と工夫にみちた方式を考えついた。あなたが招待を受けるか否かと無関係に、ほんの短期間だが、皆さんは身体によい気晴らしができるだろう。われわれとしては、以下の指示にきちんと従うようお願いしたい。どういたしまして。この書簡の最後（全部読み飛ばし、最後の追伸だけを読めば、微笑みや憤慨を節約できる）、または集会の冒頭で、われわれはまたお会いできるだろう。
心を込めて。
真面目な招待ならびに他の招待に関する銀河系間の超国家的な運任せの最高委員会を代表して、
副司令マルコス。
「人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会」の招待・開催通知を読むための指示。
一、あなたが一番お気に入りの招待・開催通知のモデルに花一本で印をつけること。
モデルＡ－（議論や理屈を求める人向けの）理論的にみて（相対的に）厳密な招待・開催通知。
モデルＢ－（真面目で公式的な人向けの）真面目で公式的な招待・開催通知。
モデルＣ－（敵を欺くための）曖昧な招待・開催通知。
モデルＤ－（急いでいる人向けの）簡略な招待・開催通知。
モデルＥ－（寄生者、警官、密告者、協力者のための）排他的な招待・開催通知。
二、あなたが選んだモデルに対応する招待・開催通知を読むこと。
三、以下の質問に関して、選択した答えを雲形の白枠で囲むこと。
①－招待・開催通知を受け取るか。はい－いいえ－わからない－その他。
②－集会に参加しようと思うか。はい－いいえ－わからない－その他。
③－われわれは勝利するに値すると思うか。はい－いいえ－わからない－その他。
四、以上が終わったら、招待・開催通知を丁寧に折りたたみ、可愛らしい帽子を作り、少年か少女に贈るか、頭にかぶってお気に入りの夢を見てください。
五、実際には指示は終わっている。しかし、偶数を避け、非対称性に対する暗黙の敬意を表するため、五番目の指示を出しただけである。
以上で終わり。ではよい旅を。
心を込めて。
真面目な招待ならびに他の招待に関する銀河系間の超国家的な運任せの最高委員会を代表して、
副司令マルコス。
注意書き ：
引き続き、いくつかの招待・開催通知のモデルを提示するので、あなたの趣味や関心、予算を考慮し、一番都合のよいものを選択してほしい。
モデルＡ ： （議論や理屈を求める人向けの）理論的で相対的に厳密な招待・開催通知。
現在われわれが知っているように、権力は自らの針路に名前が付けられるのを拒否している。権力にすれば、権力を受け入れている連中は、自分たちの行く末がどのようなものかを知る権利とか、自分たちを追いやっている死への歩みに名前を付ける権利などをもたない。権力の考えでは、その歩みに名前を付けると、権力が贈り物として提示している休眠状態は無駄になってしまう。そのような命名行為をごまかすため、権力は賢い魔法使いや入れ知恵をする取り巻き連中を抱えている。名前が付けられると、犯罪には責任者がいることになり、単なる歴史事件では済まなくなる。感覚の鈍った知識人連中はうそぶく。「新自由主義は存在しない。それは、この命名に古くさい概念の手ごろな代替品を見出だす陳腐な左翼の捏造したものである。新自由主義は、諸概念を分類し、計測し、区画し、定義し・・・無意味にできる科学的で厳密な言葉ではなく、倫理的で道徳的な修飾語となっている」。連中はこのように主張する。新自由主義を道徳や倫理的価値観の領域に入れるべきではない。その理由は、その領域に失うべきものすべてがあるとともに、まさに新自由主義があらゆる道徳や倫理的価値観の廃絶を想定しているからである。
偉大なる知識人たちは、絶望に陥り、貴族風の付け髪（または自分が占めていた地位）をかきむしりながら叫ぶ。「希望という目障りなもの、生命の防衛という上品なもの、民主主義という馬鹿げたもの、自由という時代錯誤、変革をめざす戦いという『過去への郷愁』、正義という非常識なものなど、捨ててしまえ。権力が成功しているからには、新自由主義は成功である」。そして、連中は祈る。「おまえたちはわれわれが提供する衣装を選び、身に付けるのだ。体制のなかで地位を受け取るのだ。おまえたちはけっして不快な気持ちになることはない。分類されることを拒否してはならない。分類できないものは何も計算できない。存在しないし、ありもしない。おまえたちには残り物をやる。それはきっと何かである。わが慈悲により、おまえたちに提供する権力の一部分を受け取るのだ。私は諸宗教のなかで最良のものである。私が新しい神と儀式、秘蹟と信仰表明、司祭と教区民、聖なる像と神殿を創りあげた。私に儀式を捧げるためなら、他のものは何もいらない。そのために、私は自分の勝利を物語る統計を写しだす鏡をもっているのである」
「世界中の反乱者どもよ！敗北するため団結するがよい！おまえたちは昔から一度も勝利したことはない。おまえたちの郷愁はおまえたちが昔そうだったもの郷愁でしかない。私は今ある私のままである。永続的に反復している。再生加工された古いものを手に取るのだ。私を真似るがよい。手直しを必要とする再調整に、私はつねに同意してきた。私は更新された古いものである。永遠の悪夢だが、国際化したという長所がある。おまえたちを永遠のライバルとして認めよう。昔から無意味だった武器を手にして、昔と同じように敗北を繰り返しても、私はおまえたちを許してやる。私の過去の数々の勝利への控えめな称賛として、私はそれを受け入れる。新しいことを企てるな。古いことを繰り返すのだ。私の論理から逸脱するな。おまえたちが不快で居続けることに我慢できない。昔からある標語を受け入れよ。『悔い改めるか、さもなくば死を！われわれは敗北するぞ』」
権力にとって、人間の年齢は、こどもと成人に分けられる。成人とは権力である。支配されているものは全員こどもである。こどもを止めたいなら、成人になり、権力の一部となる気持ちをもつべきである。このように権力はわれわれに言う。反対派の敗北を確認する悔悛者、よりよい存在になる気概を涙もろい茶番劇に仕立てあげる歴史的な難破の生存者がもつ苦い懐疑主義を通じて、権力は「規則を遵守せよ。感傷や反抗心を捨てよ。私の経験を受け入れよ。疑問など抱くな」とつぶやく。
世界の巨大市場のなかでは西経九十一度、北緯十六度に位置しているメヒコ南東部の山中で、大多数が先住民の血を引く者たちの反乱は、過去と未来に足を据えつつ、現在の幻滅すべき状況に挑戦してきた。権力に仕える知識人はいくつもの服やレッテルを提起しようと躍起になった。
「千年王国主義者、時代錯誤のマルクス主義の亡者、甦ったベルリンの壁の残滓、歴史の歯車を後戻りさせようとする強欲な原理主義者、進歩に無知な連中、排除された人々の抹殺という永続的キャンペーンから取り残されたことが明白な連中である」
しかし、服は破れ、レッテルは不十分だった。「思想家」たちは自問した。
「何も売りも買いもしないこの先住民たちは、いったい何者だ？誰が連中のことを心配しているというのだ？連中を抹殺することに何の気がねがいるのか？進歩という名の権力の美しい装置は、連中を消去する任務をもたないのか？情報のスーパーハイウェイのなかで尊厳について話しているこれらの未開人は何をしているのか？この「尊厳」とはいったい何だ？株式市場での評価額はいくらか？商売上の収支はどうか？外国でこんなに醜聞となるのはなぜだ？オーストラリア、日本、米国、アルゼンチン、英国、アフリカ、イタリア、エクアドル、フランス、チリ、パレスティナ、スペイン、イスラエル、カナダ、スウェーデン、ペルー、ドイツ、ドミニカ、バスク、クルド、デンマーク、ブラジル、オランダ、ギリシア、コロンビア、アイルランド、カタロニア、ベネズエラ、スコットランド、グアテマラ、タイ、そしてメヒコの人々はこのちっぽけな反乱に何を見ているのか？『希望のインターナショナル』とはいったい何だ？戦闘機、軍艦、戦車、核弾頭をいくつ保有しているのか？どのような金融市場を支配しているのか？連中に命令を出しているのは誰だ？そして、一番重要なことだが、値段はいくらなのか？
サパティスタの反乱は近代というめくるめくような道では目障りな障害である。近代という道は、各国政府を各階の支配人に、国の資源を株式市場の棚の一商品に、尊厳を時期外れの商品の大安売りに、歴史を無意味な収集するための分冊に変えてしまう。
新しい政治文化を構築することが必要である。この新しい政治文化は、権力を見る新しい在り方から誕生しうる。権力を奪取しようというのではなく、権力を行使する人との関係や、権力を行使される人との関係を革命的に転換しようとする。
サパティスモは、新しい政治的イデオロギーでも、古い政治的イデオロギーの焼直しでもない。サパティスモはそのようなイデオロギーではない。それは存在しない。それは、古い側から新しい側に横断するための架け橋として役立つものである。それゆえ、サパティスモには、古い側から新しい側に横断しようとする者すべてが入ることができる。誰でも古い側と新しい側をもっている。普遍的な処方箋、路線、戦略、戦術、法則、規則、またはスローガンというものはない。より良い、つまり新しい世界を構築しようという強い希望があるだけである。
まとめよう。サパティスモは誰のものでもない。つまり、全員のものである。
以上が「人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会」の開催通知が掲げる中心的な理念である。それはひとつの出会いであり、会議ではない。われわれはお互いに出会い、この集会からどのようなすごいことが生まれるか見ることにしよう。これはサパティスタやサパティスタ支持者だけの集会ではない。それぞれ悪夢に対してそれぞれの「もうたくさんだ！」と言ったり、言いたい者たちの出会いである。
こんな状況だから、あなたも「もうたくさんだ！」をカバンに詰込みなさい。そして、次のことを必要な人に知らせなさい。どのようにすれば歴史を再び進められるかを見つめるため、一九九六年七月二七日から八月三日にかけ、メヒコ南東部の山中において、他の「もうたくさんだ！」と出会っている。
では。
モデルＢ ： （真面目で公式的な人向けの）真面目で公式的な招待・開催通知。
われわれは自分たちの「もうたくさんだ！」について説明した。だから、あなた自身の「もうたくさんだ！」と出会いたい。あなたは愚鈍な知識人や臆病な悔悛者となってはいけない。連中の勧告や愚弄など無視しなさい。集会は祝祭である。だから、職場や家庭、学校において、あるいは失業中であっても、あなたは次のように言うことができる。自分は祝祭に招待されている。それほど時間を要さないだろう。もうちょっとしか日数（七月と八月という湿気の多い時期）がない。断ることはできない（それは拒否？ということになる）。そこで、あなたが・・・他の人たち！と出会うために出掛けるというのなら、どうして行かないの。
そして、主催者も言うように、この集会は、誰が勝利し、誰が敗北するのか、誰が強くて、誰が弱いのか、誰が物知りで、誰が無知なのか、あるいは誰が何かに優越しているのかを知るためのものではない。主催者が言うように、この集会は・・・よいもの・・・のためのものである。主催者が言うように、われわれが出会うものが何であるかを調査するためにも、集会に参加すべきである。だから、その集会に出掛けるべきである。その集会は人類のためのものと明言されている。そのためなら、何でも行なう価値がある。その集会は新自由主義に反対するものである。そのためなら、何でも行なう価値がある。
こうして、あなたは歯ブラシと一本の櫛、そしてスリッパを手にする。あなたを見送る人は、その歯ブラシ、櫛、スリッパきはいったい何のためなのかと質問するだろう。あなたは次のように生真面目に答えるだろう。歯ブラシ、櫛、スリッパを持参して出席すべきだと、招待状に明記されている。招待状にそのことが書いてある以上、何か意味があるのだろう。招待状がきわめて真面目なことは、明白で疑いなどはない。歯ブラシ、櫛、スリッパが入っているかを確認するため、あなたは荷物を再点検するだろう。そして、あなたは自問するだろう。なぜ悪魔は、メヒコ南東部の山中で、歯ブラシ、櫛、スリッパを必要としているのだろう。この疑問を大声で口に出さないよう留意してほしい。あなたが乗る予定の船・飛行機・バス・自転車・三輪車・スクーター、あるいは何らかの乗り物は、すぐに出発するから、急いだほうがよい。あなたがこの集会を見逃してしまうのは、きわめて残念だ。見失うためではなく出会うための集会を見逃すなんて馬鹿げているからであると同時に、悪魔がメヒコ南東部の山中で、歯ブラシ、櫛、スリッパを必要としている理由を知ることができなくなるからである。サパティスタはアメリカ大陸集会では色紙と糸を持参するよう要請した。そのことを思い出してほしい。しかし、今回の集会は大陸間規模のもので明らかにより真面目なものである。そこで今回、サパティスタは歯ブラシ、櫛、スリッパを持参するよう要請しているのである。数千セットの歯ブラシ、櫛、室内履き・・・で、どのタイプの武器や爆発物が製造できるか、軍事・政治情報機関はもう研究している。
「ちょっと待って。あなたは『数千』と言ったね？」
「そう、数千と言ったよ。サパティスタは歯ブラシ、櫛、スリッパ・・・などの金融市場を危機に陥れようと企てているのだ」
「ちょっと待って。それって、サパティスタは大陸間集会に数千人を招待しているということなの？」
「全然、違うさ！サパティスタが招待しているのは実際には数百万人だ。しかし、このところ、サパティスタ人気は下降中なので、少人数しか参加する見込みがないのだ」
「数千」という文字を目にして、あなたが少しばかり不安を感じたことは理解できる。しかし、あなたは、すでに船・飛行機・バス・自転車・三輪車・スクーター、あるいは何らかの乗り物に乗って、旅に出掛け、天空にまで至っている。そして、あなたは、そう、おそらく・・・明日があるさと、天空にむかって言っているようだ。
そのために、あなたは五つのテーブルのどれかのため準備した発表を持参していることを点検したはずだ。招待状がはっきりと言っているように、そのテーブルは・・・次のように呼ばれるべきである。
世界を変えるため、あるいは新自由主義を一気に全面的に終わらすための、大陸間集会の五つの作業テーブルにおける控えめな提案。
第一テーブル：われわれはどのような政治をもっているのか、どのような政治を必要とするのか？
このテーブルでは、世界規模の権力のテーマ、何が可能で、何が不可能か？あるいは小さなわれわれがたくさんいる広い世界と呼ばれるもの、といったテーマがある。独裁制に対抗する諸理念も含まれる。それは政党、選挙、それとも他の闘争形態？ベルリンの壁の崩壊後に造られた壁についてもテーマとなる。つまり、われわれがまだ理解できていない多くのこと、つまりイデオロギーで何ができるの？さまざまなイデオロギーを整理し、記録に残し、保存し、再評価し、そして埋葬するための提案。ここから、抵抗から抵抗へ、君から君へ、われわれ全員が新自由主義に対してどのように抵抗するのか？、あなたは自問できる。そうすれば、権力、つまり次のような問題について考察できる。人々の意志に従って命令が下される世界を求めることで、自主管理し、自己組織する社会、われわれが政治を実践し、議論するための新しい形式というきわめて重要なテーマを議論できるだろう。われわれはパネルも設置できる。真の民主主義とは、選挙の自由か？買収する自由か？意識の自由か？意見の自由か？誰が決定権をもつのか？
第二テーブル：経済問題－戦慄の歴史
この作業テーブルは実際に戦慄にみちている。ここで、われわれは次のように問い掛けることができよう。新自由主義がわれわれの共通の敵であるなら、われわれは個別的にはどのように堪え忍んでいるのか？。さらに、新自由主義とは何かを上手に説明し、とくに新自由主義が数多くもっている化けの皮、つまり皇帝の新しい衣装はどのようなものかを暴露すること、権力を裸にすることが可能となる。これは経済のテーブルだから、債務問題を検討するのは当然である。誰が誰に負債を負ているのか？いつになったら、大企業、銀行、諸政府は、この地球から奪い取った富を、常に失ってきた人々に支払うつもりか？戦慄にはキリがない。そこには、鎖に繋がれた（？）自由貿易の戦慄がある。輸出という搾取、つまり自由市場という独裁、新自由主義の野蛮性がもたらす戦慄がある。取引の世界を散歩することほど戦慄をもよおすものはない。兵器産業と兵器市場。麻薬取引、それは権力そのものである（仮想現実の蜃気楼としての合法性）。犯罪者どもが管理する合法性。天然資源（石油、ウラン、水、電力、森林、砂漠、極地、河川、湖、海洋、そして人類）の強奪。健康の取引。経済の最上の装置としての腐敗。経済にも仮想現実はある。マクロ経済の指標がそうである。テクノクラートの天才神話も？さらに、お金で何ができるの？いくつか例を検討しよう。持続性だって？生産、商業や他の交換、人間的な財政政策に関する代替的な方法。（おそらく金融資本、高利の帝国という）世界の大部分にみられる現在の貧困の責任者がいったい誰なのかを知り、どのようにすれば、経済政策が人間の尊厳を考えるようにできるかを知ることが、大変に重要となるだろう。そうすれば、われわれは、思想の関税に反対する徹底的な戦いにむけた戦略を思いつき、あらゆる奴隷主義の生みの親となっている強欲に終止符を打つことができるだろう。その解決法は貧困の適正化であるのかどうか、自問するべきだろう。全員に行き渡らないという富とはいったい何なのか？そして市場経済と貧困という新しい壁のなかでの東ヨーロッパの崩壊を忘れるべきではないだろう。もちろん、われわれは、経済政策に奉仕する人民ではなく、人民に役立つ経済政策というパネルを設定することになる。おそらく、「小さい者は美しい」ということははっきりしている。つまり、古い概念を新たに探訪してみよう。
第三テーマ：あらゆる文化をすべての人のために。方法は？絵画からサイバースペースまで。
さて、文化がすべての人々のためというなら、言葉の自由、つまり「世界中のあらゆる言語の長く美しい生命よ！」と叫ぶ－そうしてみたら？－自由が不可欠である。それは詩と革命に橋を架ける方法でもある。われわれは架け橋と虹のなかにいるのだから、色のことについても話し、「ブラック・イズ・ビューティフル」かどうかを見ることにしよう。あなたはジャズやブルースのことを考えているようだが、われわれはみんなのための音楽について話したい。この惑星のあらゆる音。ロック産業、それから自由になり、音楽であり、われわれの心を陽気にするあらゆる音楽のすべての美しい音のための一大特別公演を作り上げるさまざまな方法。踊り、トランス状態、そして聴衆。良い夢を見せてくれる自然の道具をすべて招こう。しかし、文化は言葉と音楽だけではない。現実の視覚的表現も含めるべきである。固定したキャンバスに描かれた造形芸術、そして動く造形芸術。録音やビデオ、絵画や映画、彫像とインターアクティブな表現、そして、忘れてはならないのが世界の偉大な演劇とそれを取り巻く小劇場である。哲学と人民のこと、そして以下に掲げるテーマについて考えなければならない。科学、成長と自由。すべての人々のための平和を達成するためのノウハウ。科学は宗教ではない。皆や個人を健康にする道はすべてよいものである。科学の進歩は人々の欲求に従うべきである。文化的服従に対する創造的な抵抗があることを認知するべきである。ヘゲモニーに石を投げつけるためのレンガ（代替的なメディア）、そして楽しみ、自由に働きく、ゆったり過ごし、気前よく感謝されながら模倣する権利を取り戻さなければならない。他にも、権力、に対する／を前にして／のもとで／の傍らで／とともに／に対抗する／の／からの／のなかの／の間での／に向かっての／までの／を介しての／のための／による／に従った／なしの／のもとに／に関する／の背後の、知識人の在り方というテーマがある。いうまでもなく、これですべてではない。すでにメディアに言及したのだから、われわれとしては通信というテーマにも言及することが不可欠である。これは非常に重要なテーマである。メディアと情報の関係が何かしら重要であることに、あなたも賛成するだろう。現実に収益性があるなら、きっとそうである。真実は商品となる。それゆえ、通信という巨大市場に赴くためには、サイフを用意したほうがよい。あなたは真実や嘘をいくらで買うの？しかし、お金を費やすことだけでなく、われわれは空間を獲得することを習得するだろう。メディアはすべてを実現できるものではない。嘘は、何千回繰り返されようとも、嘘でしかない。われわれは自前の技術体系と権力を探求するだろう。自由へ至る道としての情報のスーパーハイウェイ。人民が愛することのできる装置（知識は権力、つまり人々のための権力である）。われわれは知っている。マスメディアに役立つ芸術ではなく、芸術に役立つマスメディアのことを考え、テレビを知性のあるレベルまで高め、照明灯をつけて劇場社会を照らしだし、それが操作なのか、解放なのかを理解できることをわれわれは確認するだろう。解放とはすべての人々が楽しめる世界である。男性や女性が暮らす家にいると、より快適となることは明白である。建築や都市計画というテーマである。ああ、そうだ。落書や壁画として、壁も語ることを忘れてはならない。これらはすべてＳＦや未来主義者の直観でしかないと、多くの人は思うだろう。われわれはひとつのパネルを実施するだろう。あなたはそのことを疑ってはならない。つまり、文化の国際化、それは統一化なのか、それとも調和のとれた差異化なのか？すべての文化をすべてに人々のためにするため、われわれは、諸言語を受け入れ、発表するための特別窓口を用意する。あらゆる書いた言葉や話し言葉が招待される。話す人が出席できない場合は、書簡やカセットを送付したり、Ｅメールを溢れさせることができる。バベルの塔の解放である。
第四テーマ：市民のものでない社会とは？
さて、どうして、政治家や軍人ではなく、市民が社会を組織化するほうがよいとは言えないのか？このためには、人権のない世界はもういらない。快楽の権利や違ったものである権利を保障する社会がほしい。君の好きなように愛せよ。あらゆる解放運動が場所を得るべきである。ゲイとレスビアン、そしていうまでもなく女性とフェミニズムも場所をもてる。戦いは終わることはない。女性であることは快楽か、それとも苦痛か？それは、労働、政治、日常生活における機会均等が保障された尊厳ある生活か？多岐にわたる抑圧に対する多様な反乱。権力や家父長の時代錯誤を忘れてはならない。新しいもの、希望、そしてこどもの家に場所を与える。都市や農村において若者であることの屈辱、そして年功者の権利、年長者への尊敬といった「第三世代」のことについても語るべきである。近代的なテロはわれわれと土地や家のない人々とを結びつける。侵入、収用、再獲得の経験。あらゆる分野で、失った土地をどのようにして取戻すのか。そして、何はともあれ、われわれはすべての人々のための教育が行なわれる世界を望む。自由の実践としての教育。あらゆる言語による学校。あらゆる声を聞くべきである。諸宗教、狂信主義と支配、寛容と解放。自然保護を語ること。自然なしでは未来は無効になる。政治的・経済的追放の経験のような痛みをともなうテーマも扱わねばならない。国内避難もそうである。政治囚、監獄、精神病院やその他の去勢、性の市場における女性、男性、こどもといったテーマ、そしてエイズや新自由主義のもたらした他の病気のことも忘れてはならない。血清陽性反応者という新しく排除された者たち。ここから、健康と食料、人体の感謝と恨みへというテーマに至る。市民組織の新しい形態に関するパネルは大変よいものとなるだろう。良いもの、悪いもの、醜悪なものにいたるさまざまな非政府組織。居住区や町、エヒード、地域ごとの市民の抵抗。労働組合運動、ストライキ権やさまざまな時代遅れのもの。労働やその生産物の所有権に対する人による人の搾取。
第五テーマ：この世界には多くの世界が入れる。
こちらから境界を越え、向こうからも境界を越え、市民戦争という恐怖が歩んでくる。この地獄を回避するにはどうすべきか？地獄から脱出するにはどうすべきか？諸組織、諸民族、諸国家のあいだの新しい同盟が必要だろう。つまり、妨害することも、妨害されることもなく、自分自身であるために、先祖伝来の綱を付ける新しい結び目を作る。自分の土地で生きることも、異邦人であることを嘆くことなく、異邦人として生きることもおそらく可能だろう。明日は、大量虐殺、民族抹殺や他の災厄の明日となるべきではない。われわれは、民衆闘争の新しい挑戦という世紀末のアイデンティティを取り戻すための空間を作りだし、そこで新しいアイデンティティを考えるだろう。それは過去へ戻ることなのか？徐々にだが、多元的な未来の可能性が開きつつある。つまり、われわれはどのようにして、二一世紀における平等のことを理解し、まわりをすべて見回し、共同体的な慣習やしきたりを認めるべきか。それに内包される新しい可能性。生きている存在であり、地球規模の権力が宣伝しているような化石ではない。世界におけるさまざまな抵抗によって、殺されようとも死ぬことを考えはしない諸文明、諸文化に役立つパネル、そして人種差別や周縁化、違う人間に対する憎悪に反対する大パネルを設定できる。アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、アフリカ、アジアの先住民。多数派の社会、混血化、移住。その違いを自由に表現しよう。
疑ってはならない。自治、民族解放、領域の回復、政治的権利、言語などの戦いという普遍的な関心を引き起こす地域的な提言や経験のための特別窓口をわれわれは設置する。私は確信している。われわれは共同行動の提起にまで到達すべきである。
注意書き：
各テーブルのありそうもないテーマについて快適な紹介がなされたにもかかわらず、あなたが少しばかり気が進まないと思うのも当然である。それなら心配無用である。各作業テーブルには、「その他すべて」という特別部会が設定される。そこにあなたが足りないと考えているテーマがあることは請け合っていい（だから、あなたがしようとした抗議の手紙を書く必要はない）。しかも、集会の開始日に、もっと真面目なテーマを手にできることは確実である。
そして、そう、熟考しながら招待状を読んだあなたの姿が目に浮かぶ。集会には各人がもっているもの、つまり巻紙、rola、絵画、演劇、映画、ビデオ、サーカス、曲芸、ダンスなど何でもいいから持ち寄ることになっている。よろしい、ドキュメント、歌、絵画、演劇といったものも提出できる。発表というかたちで心に抱いていることを表現するだけでもいい。メヒコ南東部の山中にサパティスタが建設したアグアスカリエンテスごとに一つのテーブルが設けられる。そのことをあなたは知っている。だから、これらのアグアスカリエンテスがどこにあるのか心配しなくてもいい。招待状で述べているように、アグアスカリエンテスは、オベンティック、ラ・ガルーチャ、モレリア、ロベルト・バリオス、ラ・レアリダーにある。これら五つはチアパスの先住民共同体の名前である。メヒコに到着したら、誰かが、あなたの出席する共同体がどれかを伝え、かえって混同させるしか役立たない多彩色の点や線、矢印が数多く記入された地図を渡すだろう。その混同を正すために、誰かがあなたに同行し、道を教えるだろう。実際にあなたが気になっているのは、これらのアグアスカリエンテスとは何を意味するのかということである。しかし、サパティスタすべてのことを考えている。そして、招待状には語彙集となっている追伸があり、そこで、アグアスカリエンテスは船・潜水艦・飛行機・道路・橋の混合物であることがはっきりと読み取れる。しかし、この混合物がメヒコ南東部の山中でどのような形をしているのかは想像できない。しかし、アグアスカリエンテスにはひとつの定義とともに、以下のような別の定義があることを知れば、気が落ち着くだろう。
希望：希望は汽車が進む軌道のようなものである。ここにある軌道がどこに向かうか、誰でも知っている。しかし、汽車はその軌道にあるいくつもの駅に停車しながら行ってしまう。機関士だけが終点まで進む。そして、軌道はレールが一点となる所で終わることを知っている。終点になるまで、汽車はけっして休息しない。
次のようなことをケーブルニュースで読んで、あなたはきっと満足しているはずだ。副司令はフアンやマラと論争し、サン・フアン・デ・ラ・クルス、フーコー、リヒテンベルグ、ラブレーにまで招待状を出した。しかも、すべての信頼できる報道機関がそのことを保証している。シェイクスピアやセルバンテスも、自分が出席することを確認した。セルバンテスはレパントの戦いで失った腕と出会うことを待ち望み、シェイクスピアは世界文学史が自分を押し込めていた棚を捨てるチャンスを待ち望んでいるだろう。
正体不明の報道機関は、火星人にも招待状が発送されたという情報を流している。誰が火星人に似ているのか、誰も知らない。しかし、可能性としてもっとも高いのは自分に似ているということで（マラとフアンは請け合う）、マラとフアンと副司令は（そうとは知らず）、他人ではなく自分に似ている者全員を招待することで意見が一致した。
こうして、あなたは旅立ち、何気なく「狂人のためのバラード」という題のタンゴを口笛で吹きだす。集会の音楽テーマとなるかも知れないと思う。最初に明確に言っておいたことを少しばかり思い出してほしい。招待状が明確に述べているように、集会に参加できるのは招待された人だけである。信任状の作成は一九九六年七月七日までに行なうこととする。あなたに質問される前に言っておこう。招待状で述べてあるように、以下の場所で信任状を得ることができる。
ヨーロッパ：連帯委員会、連帯集団、連帯グループや社会的・政治的な非政府組織や法人の代表は、各国の大陸間集会委員会を通じて、信任状が付与される。各国の委員会は適切な時期にその信任状発行センターのデータを公表する。
米国：メヒコ・米国の民主主義のための全国委員会。メヒコにある国際連絡委員会。
カナダ：大陸間集会のための全国委員会。
ラテンアメリカ、アジア、アフリカ、オセアニア：メヒコにある国際連絡委員会。
メヒコ：国内連絡委員会。
こうして、信任状を手にしたあなたは、明確な目的をもって、メヒコに向かうことになる。その目的とは、メヒコ南東部の山中で出会うために必要とされる何千セットもの歯ブラシ、櫛、室内履きに篭められている謎を解読することである。私の言うことを信じてほしい。明確な目的をもった旅ほど心が落ち着くものはない。
では、われわれはあなたを待つことにしようか？
モデルＣ ： （敵を欺くための）曖昧な招待・開催通知。
これは・・・あのう・・・つまり・・・よくわからないが・・・では、どうか・・・おそらく・・・その日は・・・となるだろう。
モデルＤ ： （急いでいる人向けの）簡略な招待・開催通知。
銀河系間集会。ストップ。あなたは招待されている。ストップ。七月二十七日から八月三日まで。ストップ。一九九六年。ストップ。メヒコ南東部の山地。ストップ。さぼらないこと。ストップ。終わり。ストップ。
モデルＥ ： （寄生者、警官、密告者、協力者のための）排他的な招待・開催通知。
あなたは招待されていない。来るな。来ようと思うな。
☆ ☆ ☆
この招待・開催通知で考慮されていない予想外のことは、われわれの期待どおり、何らかの形で解決されるだろう。
以上ですべてである。われわれは、あなたが「人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会」に出席するのを待っている。
では、お元気で。そして、急いで。歴史は急いでいる（とのことである）。
メヒコ南東部の山中より。
反乱副司令官マルコス、
メヒコ、一九九六年五月
これまでの全体に欠落していた真面目さを補足するための追伸
銀河間集会に参加するための基礎（つまり、開催通知状）。
Ⅰ．「人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会」は、七月二十七日から八月三日にかけて、メヒコのチアパス州、ラ・レアリダー、モレリア、ラ・ガルーチャ、オベンティック、ロベルト・バリオスに設営されたアグアスカリエンテスで開催される。
Ⅱ． 信任状の権利はＥＺＬＮの招待によって付与される。主催国を含む各国に割当てられる数が制限されることもある。信任状発行のセンターは以下のとおりである。
ヨーロッパ：連帯委員会、連帯集団、連帯グループや社会的・政治的な非政府組織や法人の代表は、各国の大陸間集会委員会を通じて、信任状が付与される。各国の委員会は適切な時期にその信任状発行センターのデータを公表する。
米国：メヒコ・米国の民主主義のための全国委員会。メヒコにある国際連絡委員会。
カナダ：大陸間集会のための全国委員会。
ラテンアメリカ、アジア、アフリカ、オセアニア：メヒコにある国際連絡委員会。
メヒコ：国内連絡委員会。
特別招待者は国際連絡委員会を通じて信任状が与えられる。詳細はパウリーナ・フェルナンデス・Ｃまで連絡のこと。
Ⅲ． 全員の登録ならびに信任状作成の期限は一九九六年七月七日とする。信任状を得た参加者全員のメヒコでの審査は七月二十日から二十六日にかけて実施する。
Ⅳ． 信任状作成の際、各参加者は自らの関心と意志決定に基づき、五つの作業テーブルのいずれかに登録しなければならない。ひとつのアグアスカリエンテスにはひとつの作業テーブルしか設営されない。
Ⅴ． 主催国を含むすべての参加国で、大陸間集会という枠組みのなかで、コンサート、フォーラム、映画会、演劇、ビデオ上映、写真展、絵画展など、さまざまな文化的、政治的活動を実施するよう提案したい。集会の中心となるイベントが行なわれる期間の前後、あるいは期間中、外国の連帯委員会はそれぞれの力量に応じ、国内でこの種の活動を推進してほしい。メヒコにおいては、そのための特別委員会が共和国内の諸都市で並行的に行事を組織することになる。
メヒコ南東部の山中より、
「人類のため、そして新自由主義に反対する大陸間集会」組織委員会を代表して、
反乱副司令官マルコス、
メヒコ、一九九六年五月
出典：Perfil de La Jornada,1996/6/10
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