メキシコ人民、全世界の人民と政府、国内外の報道機関に対する公式声明
1994年 3 月 1 日
「我々は施しや贈り物を求めていない。過去の我々の父母や祖父母のように、人間として尊厳、平等と正義にみちた生活をおくる権利を求めている。」 メキシコの人民へ！ （7）カナダと合州国とで締結された自由貿易協定を改正する。なぜなら、現在の協定は先住民を無視したもので、一定の労働の質をもたない者への死刑宣告にほかならない。 （8）憲法ニ七条は、土地は耕作する先住民、農民のものであるというエミリアーノ・サパタの基本精神を尊重すべきである。国内外の大農園主や大土地所有者、農民でないのに多くの土地をもつ人物の手にある膨大な面積の土地は、我々の革命農地法で規定されているように、まったく土地をもたない我々人民の所有となる。土地の分与に際しては、農業機械、肥料、殺虫剤、資金の融資、技術援助、改良種子、家畜、そしてコーヒー、トウモロコシ、インゲン豆などの農産物の正当な価格が保障されねばならない。分与される土地は、良質で、道路、輸送、灌漑システムが整備されていなければならない。すでに土地を所有する農民も、農村での労働を容易にし生産を高めるための上記の援助を全面的に受ける権利をもつ。新しいエヒードや共同体を創出すべきである。サリナス政権による憲法ニ七条改正は破棄され、土地に対する権利は我々の憲法に戻るべきである。 （9）患者を治療するため、専門知識をもつ医師や十分な薬品を備えた病院を各行政地区の役所のある町に建設し、エヒード、共同体、農業集落に農村診療所を設置し、医療従事者に対する能力養成や正当な報酬の支払いを行うことを要望する。すでに病院のある所では、できるかぎり早急に再整備し、万全な外科治療ができるようにすべきである。より丁寧に住民を治療するため、大きな共同体には診療所を建設し、医師や薬品を備えるべきである。 （10）政府から独立し、先住民が管理・運営する先住民ラジオ局を設置し、地方、地域、州、国、国際レベルの出来事について、先住民が正しい情報を得る権利を保証する。 （11）メキシコのすべての農村共同体に、電気、水道、道路、排水路、電話、輸送手段など必要なサービスの備わった住宅が建設されることを要望する。都市部にあるテレビ、暖房器具、冷蔵庫、洗濯機などの便利な器材を入手できるよう要望する。住民の健全な娯楽や、先住民の人間としての条件を尊厳あるものにするため、スポーツや文化などの余暇活動センターを農村共同体に備えるべきである。 （12）先住民族の非識字を一掃することを要望する。そのためには、我々の共同体において、無償で教材が提供されるとともに、金持ちの利害だけを守る教師ではなく、人民に奉仕する、大学教育を受けた教師が配備されている良質の小・中学校が必要である。行政地区の役場町に小・中・高等学校を設置し、政府は生徒に対して制服、靴、食事、教育に必要な資財すべてを無償で供与すべきである。役場町からきわめて遠隔地にある地区の中心的共同体には寄宿舎つきの中学校を設置すべきである。就学前から大学まで教育はすべて無償となり、人種、信仰、年令、性別、政治信条にかかわらず、すべてのメキシコ人に対して教育が行われねばならない。 （13）すべての民族集団の言語が公用語となり、小・中・高等学校、大学において、それらの言語の教育が義務化されるべきである。 （14）我々の文化と伝統を考慮し、先住民族としての諸権利や尊厳を尊重する。 （15）我々先住民は、つねに受けた差別、軽蔑の対象となり続けることを望まない。 （16）我々が、先住民族として独自の自治権をもち、自ら組織・統治するようにすべきである。我々はもはや国内外の強大な権力者の専横の犠牲者にはなりたくない。 （17）合法性を欠く腐敗した政府の介入を排除し、先住民族の慣習と伝統に基づいて、裁判は先住民族自身の手で行われねばならない。 （18）我々の仲間が、生き延びるために、麻薬密売、犯罪、売春などの悪事に手を染めないように、メキシコ共和国の農村と都市のすべての労働者が、正当な賃金が支払われる尊厳ある仕事に就けるようにすべきである。農村や都市の労働者に連邦労働法を適用し、ボーナス、福利厚生手当て、休暇、実質のともなうストライキ権などを認めるべきである。 （19）我々の生産する農産物に対する正当な価格を要求する。そのためには、売買する市場を我々が自由に探し、確保するとともに、搾取者のコヨーテ（仲買い業者）の言いなりにならないようにすべきである。 （20）我々のメキシコ、とりわけ共和国でもっとも豊かな州のひとつでありながら飢餓と貧困が日々深刻化しているチアパス州における資源の略奪に終止符を打つべきである。 （21）高利率の融資、貸付け金、租税によって生じた負債はすべて無効にするよう要望する。なぜなら、メキシコ人民はきわめて貧困であり、その負債を支払えない。 （22）農村や都市において、我々の仲間を何千人も死に追いやる飢餓と栄養失調に終止符を打つべきである。各農村共同体に、連邦、州、行政地区の政府が経済的に援助する協同組合店舗を開設すべきである。その店舗の価格は正当でなければならない。さらに、商品の輸送のため協同組合所有の輸送車輌も備えるべきである。さらに、政府は一四才以下の年少者に無償で食料を提供しなければならない。 （23）チアパス州、そしてメキシコの全刑務所に不当に収監されているすべての政治囚、貧しい囚人の即時・無条件釈放を要求する。 （24）連邦政府軍、治安・司法警察が農村地区へ侵入することを止めるよう要求する。自分たちの権利を防衛するため組織化している農民に対し、脅迫、強制退去、略奪、弾圧や爆撃を行うためだけに、彼らは農村に進駐する。我々人民は権力を乱用する抑圧的な兵士や治安・司法警察の存在に疲れ切っている。連邦政府は我々人民を爆撃するために使用されたビラトウス型飛行機をスイス政府に返却すべきである。その返却によって生じたお金は、農村や都市部の労働者の生活を改善する計画に充当すべきである。さらに、メキシコ人民を弾圧するため使われているヘリコプターを引き上げるようアメリカ合州国政府に要求する。 （25）武器を手にとって蜂起した先住民・農民大衆は、慎ましい茅葺きの小屋しかない。しかし、連邦政府軍による民間人の居住地区の爆撃によって、彼らの慎ましやかな家やごく僅かの財産すら破壊されている。それゆえ、連邦政府軍部隊の爆撃や活動によって物的被害を被った家族に対して連邦政府が補償するよう要求する。さらに、サパティスタであれ民間人であれ、戦争によって寡婦や孤児となった人々に対する補償を要求する。 （26）我々先住民農民は、平和で落ち着いた生活を望んでおり、自由と尊厳ある生活をする権利をもって生きていきたい。 （27）武器をもたない団体の組織化すら認めず、合法的で非武装の闘争すべてを処罰し、弾圧しているチアパス州の刑法を廃棄すべきである。 （28）国家の後ろ盾を受けたカシケによる共同体からの先住民追放を停止することを要請し、要求する。追放者全員の出身地への自由かつ自発的な帰還を保障し、損失した財産を補償するよう要求する。 （29）先住民女性が要請しているのは以下のとおりである。 （30）パトロシニオ・ゴンサレス・ガリード［1988−92年知事、前内務大臣］、アバサロン・カステイジャーノス・ドミンゲス［1982−88年知事］、エルマ・セツェル・マルシェジェ［1993−94年知事］に対する政治裁判を要求する。 （31）EZLNの全構成員の生命を尊重し、EZLNの構成員、戦闘員、同調者、協力者に対し、いかなる刑事訴訟や弾圧も行わないことを保証するよう要求する。 （32）人権擁護団体や委員会は、すべて政府から独立した非政府組織であるべきである。なぜなら、政府の人権委員会は政府の横暴を隠すことしかしないからである。 （33）政府や特定の政党に属さない人物によって構成される「正義と尊厳に基づく和平全国委員会」を形成すべきである。この「正義と尊厳に基づく和平全国委員会」は、EZLNと連邦政府とが達した合意事項の実施を監視する委員会となるべきである。 （34）紛争の犠牲者に対する人道的援助は、先住民共同体の真の代表者を通じて分配されるべきである。 我々人民が掲げるこの正当な要求が解決されないなら、我々は目標を達成するまで戦いを継続する用意があり、そのことを決意している。 我々は、この大地でもっとも小さく、顔も歴史もなく、真実と熱情で武装し、夜の山岳部からやってきた、真実の男と女［チアパス高地のマヤ諸民族において自民族を指す表現］であり、昨日、今日、そしてつねに死者となっていく存在である。 自由を！正義を！民主主義を！ 敬意を込めて、メキシコ南東部より。
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