この発言を始めるに当たって、何よりもまず、政治分析社会経済調査センター（サパティスタの間では、CAPISEのほうに馴染みがある）の同志たち、ならびに実際には、想像もしていなかったが、四角（すなわち、矩形）のテーブルについているが、この円卓会議の実現を可能にしてくれた人々に対して、感謝の気持ちを表明することを許してほしい。また、農民先住民開発教育調査センター(CIDECI)とライムンド・サンチェス・バラサ博士には、苦難や障害にもかかわらず、オルタナティブな教育とエコロジーの場として機能しつづけているこの機関の普段と変わらぬ歓待に感謝したい。
別のキャンペーンへの我々の直接的な参加の第２段階にあたる新たな開始にむけ、我々はEZLNとして招待され、「メヒコの農村に対する征服戦争」というテーマに参加している。
この問題に関する我々の立場を理解するため、いくつかの前提となる想定を知っていただく必要がある。

A) 新自由主義の展開する戦争について

一、約７年前[これは明らかなミス、10年前である]、つまり1997年６月の「世界のジグソーパズルにおける失われた七つのピース」というこれと似た文書において、我々サパティスタには、「私が言ったことを憎んでいるが、私は言ってしまった」と言うことが認められていると、発言したことがある。その文章において、我々は、現段階の資本主義が今まで辿り、これから辿ることになる道を大まかだが素描しておいた。その際、資本主義が歩む道とは戦争の道であると、我々は定義した。つまり、それは征服戦争であり、世界規模の戦争であり、全面的に展開される第4時世界大戦の道であると定義しておいた。その戦争は、残酷さにおいて、これまでの世界戦争を凌駕しているが、征服戦争がもつ伝統的な規範を踏襲するものである。つまり、破壊し、人口を減らし、その後、建設し、再入植活動を行なうのである。

二、資本主義の現段階は、厳密な意味で、新しい征服戦争である。第４次世界大戦であり、世界の至る所で、いかなる時にも、あらゆる形で展開している。これまでの戦争の中でもっとも世界規模で展開している。こうして世界はつねに再発見され、そのたびに、新しい神、つまり市場は、以前は無視され、商業流通の外にあったものを商品に変えている。

三、こうして、水、空気、土地、地下にある資源、遺伝子暗号、そして、以前は知られず、利用価値や交換価値がなかったあらゆる「事物」が、この目まぐるしく変わる近年において、商品となってきたのである。
その見本として、メヒコ南東部の山中にあるウィテペック山[サンクリストバル市西郊にある水源涵養林の広がる2400メートルの丘]に設置された監視キャンプでサパティスタ先住民が護ろうとしている天然の地下水層や湧泉をあげられよう。(注目して欲しいのだが)コーラ飲料水を製造している多国籍企業[山麓部にはコカ・コーラとペプシ・コーラの工場がある]は、そこから水を汲み上げ、商品に変えている。企業が得ている莫大な利潤と引換えに、気高く傲慢なホベル[サンクリストバル市の別称]は、その旗めく形のロゴにある迷惑千万な赤と白の二色で景観が台無しになっているという以外に、何の見返りも受取っていない。

四、技術や情報の変化や前進にもかかわらず、つねに存在している商品とは、労働力、つまり農村や都市の男女の労働者たちである。労働者のいない世界という資本主義の夢は、権利を主張し、労働組合を組織し、ストライキをするということのないロボットや機械だけの世界である。それはまったくの夢でしかない。支配的システムである資本主義の亡骸のうえでのみ、別の世界は可能となるだろう。

五、資本のグローバル化は国境を破壊し、世界の枠組みを変えてきた。現在では、市場の論理が、国際関係や瀕死状態の国民国家内部の関係を規定している。

六、市場の論理は、自らの無垢な外見の影に、搾取、略奪、弾圧、軽蔑、つまり資本主義の論理を隠蔽している。まるでチャバ・フローレス[メキシコの民衆の生活を唄った歌手]が唄っていた夢のようである。つまり、この資本主義システムでは、マレーテやその類の宝くじ以外には、清廉で無垢な富など存在しないということである。資本主義の富は強奪と搾取に由来している。

七、 技術や情報の革命は、資本、そのもっとも象徴的な部門である金融資本が同時にあらゆる場所に存在できる可能性をもたらした。

八、資本主義経済のグローバル化の過程、つまり第４次世界大戦のなかで、「敵」となるのは地球そのものである。そこに暮らす大多数の住民だけでなく、地球がもっている自然すべてが、敵となる。これが「オウン・ゴール」であるとしても、驚くことはない。愚かさは、強欲な資本家につきものの同伴女性である。この戦争において、攻撃する国家は、多国籍、古典的な言い方だと、超国家な存在である。

九、帝国主義は戦争の手法を変えたが、支配者は資本であり、その終身皇帝である金融資本は、株式市場でカメレオンのように姿を変え、自らの政策に邁進している。
フォーブスの一覧表には、地球でもっとも資産を持っているとされる人々が登場するが、｢権力株式会社｣と我々が呼んでいる産業、商業、銀行、旅行会社などの所有者である一握りの集団は一覧表には出てこない。
ビル・ゲイツ、カルロス・スリム[テルメックスなどの所有者、2007年度のフォーブスの番付では世界一の資産家]の二人を例にあげれば、彼らは自分たちが世界でもっとも資産をもっていると信じているし、「権力株式会社」は自分たちの信じていることを実行している。しかし、７年前から、合州国に本拠をおいている53企業だけで、世界の利潤の４割を独占している。この北米企業は、日本、ドイツ、フランス、英国、イタリア、オランダ、スイス、韓国に本拠をおいている他の企業とあわせると、世界の利潤の９割を独占している。1997年、これらの国にある193企業は、世界の利潤総額である2500億ドルのうち、2250億ドルを手にしていた。
コカ・コーラ氏なる人物は存在しない。だから、大富豪の一覧表に名前はない。ウォール・マート、フォード、クライスラー、ジェネラル・モーターズ、「香港上海銀行（HSBC）、サンタンデール、モンサントなども、一覧表に登場しない。

十、第三次世界大戦で｢征服された｣事業の後、つまり社会主義陣営だった領域を征服した後、資本主義は、アフリカ、アジア、中東、ラテンアメリカといった自然資源の豊富な貧困諸国にその血塗られた手を伸ばしている。世界のなかでそれらの地域では、二つの点で際立っている。豊かな自然資源を保有していると同時に、貧困の度合いも伝説となるほど高くなっている。

十一、世界レベルでの先住民族（３億人以上）は、地球の自然資源の６割を占有している地域に居住している。この領域の再度征服は、資本主義戦争の主要目標の一つである。

十二、ラテンアメリカは、すでに征服戦争が展開する新たな舞台のひとつとなっている。それゆえ、アメリカのインディオ人民は、これまでの五百年と同じように、抵抗の主役を果たすことになるであろう。しかし、農村や都市の労働者たち、さらには、女性、若者、性的嗜好の異なる人々など、独自のアイデンティティ、つまり違いを有する新しい人々が団結しなければ、その戦争は完全な敗北で終わるだろう。この３つの社会セクターは、階級として自らのアイデンティティを表明できるし、そうされているが、他の人たちと異なる独自の現実を有しており、多くの場合、それに限定されないが、文化面で固有のアイデンティティを構築している。

B)　グローバル化時代における上の世界の政策について

一、 この征服戦争において、ラテンアメリカの大多数の国に派遣されている勢力は、政府や政治屋連中を構成している。キューバ、叛乱勢力が増えているベネズエラ、独自の方針を定めつつあるボリビアを除き、ラテンアメリカの政府は、それぞれのイデオロギーとまったく無関係に、この大地における最初の住人たちの文明が開花していた領土を再獲得する戦争における隊長になっている。

二、 各国政府は、もはや雇用主の指令を達成する一支配人でしかない。ようするに、支配人といっても、監督にほかならない。

三、 国内市場はかつてその周辺で開花していたものすべてと対立している。伝統的な政治階級、中間階級、批判的な思考、協調組合主義、肥大化した労働者や農民の中央組織、教育・研究・文化・芸術機関の相対的な自治、共同体的な人間関係、社会組織、社会の安全性、公的部門の安定性、民主的な選挙などと衝突している。

四、国民国家とともに開花し、社会、イデオロギー、政治面においてそれを支える基盤となっていたいわゆる「中間階級」は、現在では、まったく非武装の状態になっている（メキシコではその度合いはやや低い）。そして、自分たちの良心や心の安定に影響を及ぼす緩慢な変化を嘆いているにもかかわらず、自分たちの昔の要塞やガラスの塔、つまり家族というものにまで、破壊が及んでいる様子を絶望的な眼差しで眺めているだけである。

五、政治的任務に関する現在の論理からして、上の世界にはなすべき任務など存在していない。「断絶なき変化」を掲げる開明的な一部メディアの情熱は、またもや、モラル面での災厄、幻滅、二日酔いの状態に陥るだろう。

六、自由へ至る道は、カウディージョや開明的なエリートによる運転によって、｢大衆｣が移動するという、近代的な舗装された高速道路ではない。それとは逆に、自由な存在になる道は、まだ、どこにもできていない。その道は、戦いながら、自分の到達したい場所に至るルートをあれこれと試している顔も名前もない人々によって構築されている。

C)　通信メディアについて

一、民主的闘争、社会闘争を「抑制するもの」は、以前なら、軍隊、警察、オリンピア部隊[トラテロルコ虐殺に関与]、アルコン[1968年の学生運動弾圧に関与]、白色警備隊だったが、現在では、巨大電子メディアである。

二、今や、マス・メディアは、公安省、芸術審査委員、いつも非宗教人とは限らない炎を吐くような司教壇、非公式の影の内閣、万能の権限をもつ警察、下の人々に有罪、上の人に無罪を宣告する判事となっている。もう何度となく、マス・メディアは楽しんでいる。

三、「犬の尻尾を振らす」は英語に特有の表現である。その意味は、「犬の尻尾を動かす」である（よく注意して。でないと、理解できない）。それは、メディア操作の最高の離れ業である。ニュース報道、分析、政治に関するコメントやコラムは、「犬の尻尾を振らす」こと、つまり、嘘によって、「物事を何事もなく過ぎ去るようにする」ことを目的としている。
それは、電子メディアの新しい業でもある。現実性や運動を無視し、貶めることによって、それらを消去することによって(最近の出来事としては、サンサルバドル・アテンコの人民、オアハカのAPPOの運動、2006年7月2日の選挙不正に抗議する動員がある)、現実的な実体なくメディア的な仕掛けを「創出」できる。
つまり、ポスト・モダンの神話を創り上げている。
通信メディアが創り上げ、信じられ、広まっている神話の数々をあげてみよう。
「政治に関する神話」―フェリッペ・カルデロン・イノホサ政府は、強力で、正統かつ合法的なものであり、すべてのメキシコ人のことを気にかけている。PRDは左翼政党である。PANは「文化革新」の政党である。PRIは政党である。
「スポーツに関する神話」―メヒコのサッカーのナショナルチームは国際的水準に達している。米国野球のワールド・シリーズは世界的なものである。チアパスのサッカー・チームであるハグアレスのユニフォームの色はきれいである。
「軍隊に関する神話」−連邦軍は国家主権の番人である。ベラクルス州のソンゴリカ山地で政府軍兵士によって強姦された年配の先住民女性は、暴行ではなく、慢性胃炎で死亡した。軍隊は麻薬取引業者と戦っている。
「警察に関する神話」−テピート地区に対する連邦政府地によるたび重なる襲撃は犯罪を撲滅するためであり、商業施設センターの建設を推進するためではない。警察は犯罪を予防している。連邦情報局は、組織犯罪と戦っている。
「芸能に関する神話」−ブリトニー・スピアーズは、中毒症状改善の番組で身体を悪くした。RBDは音楽グループである。
「文化に関する神話」−国立芸術文化審議会(CONACULTA)は文化や芸術の育成機関である。国会下院はメヒコ映画の育成を真剣に考えている。セバスティアンは彫刻家である。
「教育に関する神話」−エルバ・エステル・ゴルディージョ[全国教育労働者組合を牛耳るボス]は教師である。CENEVALは中高等教育を推進している。ホセフィーナ・バスケス・モタはメヒコの教育の改善に努めている。
「法律に関する神話」−メヒコの司法は、誠実で、清潔で、公平で、客観的である。憲法は我々の国の最高法規である。メヒコでは法治国家主義が堅持されている。
「経済に関する神話」−民営化は国の経済にとって不可欠で、緊急の問題である。国家公務員社会サービス保険庁は改革法案で救済できる。銀行は国の経済に役立っている。
「漫画に関する神話」−政治屋連中に関するニュースと漫画コラム欄にはかなりの隔たりがある。
「宗教に関する神話」−オネシモ・セペダ[エカテペック司教区の超保守派司教]はカトリック司教である。
「倫理に関する神話」−中絶問題に対する立場は、生と死のどちらを支持するかという立場に繋がる。
「歴史に関する神話」−クアウテモック・カルデナスはラサロ・カルデナス・デル・リオと（姓以外にも）何か同じものを持っている。
「情報に関する神話」−グティエレス・ビボとハコボ・サブルドフスキは、自由で独立した誠実な報道の代弁者である。クロニカ紙は新聞である。ホアキン・ロペス・ドリガとハビエル・アラトレは新聞記者である。
「性に関する神話」−マルコス副司令は美脚である（!arrrrrrrrrroozzzz con leche!)

D)　メヒコの農村部について

一、ホンジュラスのビア・カンペシーナの同志ラファエル・アレグリアが、世界中で起きていることを簡潔かつ明快に説明したように、メヒコの農村部でも破壊と人口減少が起きている。それと同時に建設と再入植活動も展開している。

二、この問題に関して、同志セルヒオ・ロドリゲス・ラスカーノが詳しく説明する（注―セルヒオ・ロドリゲス・ラスカーノの発表）

三、三つの主要政党が統治する３つの州の事例
（a）ソノラ州( PRI統治)
二つの写真がある。ひとつは、ソノラ州にある先住民族マヨの領域に至る道で撮ったものである。道路の脇に、巨大な記念碑のような「ソノラ州政府は雇用の創出という公約を果たす」という広告宣伝がある。そこから10メートルほどの所に、古い工場が酸化し錆びついて、バラバラに崩れるままになっている。
もう一つの写真はマヨの先住民共同体で撮ったものである。ホルナーダ紙の月刊別冊誌『オハラスカ』に載った写真について、一人の指導者が｢解説｣をしている様子である。マヨ民族に対する土地の略奪の歴史について、我々に説明している写真である。それは、トホノ・オダム[パパゴ]、セリつまりコムカック、ヤキ、ピマの領域でも起きている歴史と変わらない。
(b) サンルイスポトシ州(PAN統治)。
ポトシ州の高原部である。別のポトシのメンバーは、その地域のことを「階段のようなもの」と言っていた。ワステカ地方から砂漠地帯まで、階段状に展開する植生変化を示した一枚の地図を見せてくれた。高原部に元々住んでいた農民が、プエブラ、ベラクルス州のワステカ地方に行くに従って、徐々に先住民に変わっていくという説明を聞いて、我々の口からも、「確かに、階段状になっている」という言葉が出た。住民の出自が変わっていくだけでなく、土地所有のあり方も変わっていく。かつて、エヒードがあった場所は、今では大土地所有農園が広がっている。かつて、エヒード運営委員会があった場所では、今では農園監督が支配している。かつて住民の食料を生産していた場所では、今では輸出用の移住者が生産されている。
(c) サカテカス州（PRD統治）
ラ・テソレラの共同体では、民主的なPRDと民衆拡大戦線(FAP)の名士リカルド・モンレアルが名義貸ししている企業が、共同体の住民を脅そうとして、これまで知られていなかったもの、つまり尊厳と遭遇した。同時に、「別のサカテカス」の別の人物は、我々に次のように説明した。ある集落では元の住民で移民する人の数は激増しているのに、奇妙なことに、村の住民数も増えているという。調査したところ、次のことが判明した。
サカテカス州の人々は、土地の略奪、農村に対する支援の不足、低賃金などの理由などで、米国に移民しなければならない。彼らのエヒードがあった場所は大土地所有者に占拠され、その労働力となっているのは、ポルフィリオ・ディアス[19世紀末から20世紀初頭の自由主義独裁者]の時代のように、ペオンとして働くために呼び寄せられた先住民である。PRD支配のサカテカスでは、本来のサカテカス州住民の３分の２が米国で生活している。
サカテカス州での戦闘を記念するブファの丘にある博物館には、当時の新聞の見本がある。新聞には、ビジャの｢盗賊一味｣は、いずれ壊滅されるだろうという記事がある。それから数日後、サカテカス市は陥落し、ビジャ軍の管轄下に入った。

四、ホアン・ペドロ・シュテディルによって明確に示されたことを精査すれば、 エドゥアルド・ガレアーノ、そしてカトリック司祭でもあるドン・ペドロ・カサルダリガとドン・トマス・バルドゥイノといった下の雨を寄せ集めてきた人々の仕事を精査すれば、我々は、メキシコの農村部において同時に展開している征服戦争のいくつもの歩みを見出すことができるだろう。信用貸し、支援や市場もなくしてしまう社会政策の取り壊し、憲法27条改正という司法による｢防衛｣を破壊する新法律の制定、(製品や消費物資の)価格面での経済的エンスト、生活水準の予測の育成（cultivo de expectativas de nivel de vida）、司法の無防備、売買や略奪、移民、領域の資本主義による再編成、再入植などが横行している。

五、アテンコと大地防衛民衆戦線(FPDT)、オアハカとオアハカ人民民衆会議(APPO)、チアパスとサパティスタ民族解放軍(EZLN)
（ａ）アテンコは土地防衛の戦いにおいてひとつの決定的なポイントとなった。アテンコの男性や女性の示した勇気は、土地防衛人民戦線（FPDT）の知性や積極的な参加とともに、下の左側の農民運動を鼓舞することになったいくつかの勝利の一つでもある。その指導者の一人は現在も不当収監されているイグナシオ・デル・バジェである。アテンコは、国家の政策による人権侵害や女性暴行をともなう2006年５月３・４日の弾圧を意味するだけではない。それは、忘れることがあってはならない事件である。フォックス政権の推進した空港に反対して展開された勝利した運動である。政府、企業家、宗教家や巨大マスコミの連合と対決した運動である。アテンコの人民、そして人民とともにいるFPDTは、我々にとても多くのことを教えてくれた。
（ｂ）オアハカのAPPOが領導してきた社会運動も、社会闘争に重要な教訓を残している。通信メディアの操作によって、オアハカ州の州都に限定された運動のように思われてきているが、オアハカ州の農村地帯において極めて輝かしい瞬間を持ってきた。農村部において、インディオ人民は、自らの闘争と抵抗の歴史から輝きを導き出してきている。APPOの運動の大きな教訓のひとつは、彼らの被った被害、それから回復する能力、そして掲げた目標の堅持である。こうして、オアハカは、11月25日の弾圧、その弾圧が示した不法性や恣意性だけを意味するものではない。同時に、自律的な民衆による組織化、政治制度や政党の後立てもなく、極めて困難な状況で発揮された直接民主主義などを意味している。
（ｃ）我々の苦悩と希望が詰まっているチアパスにおいては、サパティスタの先住民共同体が、別の世界が可能であることをはっきりと示している。先住民文化、先住民の大地と領域に関する基本概念を基盤に、別の世界を築くことができる。我々は、先住民の言葉、歩み、生活様式、つまり闘争のあり方を「尊厳」と呼んでいる。
つい先頃のお話によると、メヒコ南東部の山岳部における夜明け前の影の中で、褐色の肌をした男女たちの心にある唯一の恐れは、不正に対して何もできないというものである。彼らこそ、人々の守護者にして心であるボタン・サパタの強固な核である。その男女たちは、我々を見守り、付き添っている。「それはいったい全体、何の話なのか？」と、誰かが彼に尋ねる。男女たちは答えるだろう。「よりよい存在になることについてである。つまり、集団として、よりよき存在になれる唯一の方法についてである」。「尊厳ある存在になること、そうしたことすべてについてである」と、呟くような声だが、監視者たちの声は叫び声のように聞こえる。
今、私は付け加えよう。「ビア・カンペシーナは、世界のいたるところで、尊厳ある存在になる道の一つを歩んでいる」

アテンコのための自由と正義を！オアハカのための自由と正義を！

次にダビ司令官が発言する。

叛乱副司令官マルコス、2007年3月、メキシコ

＜出典＞−2007年3月25日、チアパス州サンクリストバル市ティエラ・アデントロで開催された｢大地、領域、自然資源の防衛｣シンポジウムでの発言