サパティスタ民族解放戦線（ＦＺＬＮ）の声明　（注）

戦争と人種差別主義を停止せよ

２００１年９月２３日

　全世界を巻き込んだ戦争が再び全人類を脅かそうとしている。９月１１日にアメリカ合衆国で起こった重大な事件と合衆国政府の好戦主義的な反応は、世界をほとんど永続的な戦争状態へと追い込むと同時に、その状況は世界の政治と経済の権力を不当に占有している者たちによって民衆へと押しつけられようとしている。

　アメリカ合衆国の都市へのテロリストの攻撃は、全世界に衝撃を与えた。その攻撃の深刻さは、罪のない市民の膨大な犠牲者の数とその悲惨さからも判断される。テロリストの攻撃を正当化するものはなに一つない。
　今、犠牲者の痛みの上に、権力と金を握った人間たち、戦争を商売とする者たちはあるはずもない正当性を作り上げ、特定できない敵に対してその軍事力の全てを投入しようとしている。しかも、それは世界的規模の不公正な無秩序によって強制された戦争や経済政策によって破壊された国々に対して狙いが定められている。そして、それらの国の住民はこうしたことの報いを常に被ってきたのである。今回の攻撃には高度な技術を持つ合衆国のミサイル攻撃も例外となることはない。そして、報復をうたう十字軍によって、犠牲者は増え続けることになるだろう。アフガニスタンに対する軍事行動をとるという脅しだけで、合衆国は最初の犠牲者を生み出した。日常生活の場から根こそぎに移動させられた何千人という避難民が国境地帯に押し込められ、そして、生き延びようとしているのである。

　権力者たちはいつものように自分たちに都合がいいように、つまり受益者が最も少なくなるように人類を分断しようとする。彼らは今、一つの国の民衆と他の国の民衆とを敵対させるだけではなく、権力者の真の利益を隠すために人種間の憎しみを挑発して、分断を深めようとしている。そうすることによって、地球とその天然資源が存する広大な地域をコントロ−ルしようとしているのだ。そのために全てのアラブの民衆やイスラムの宗教や文化を持っている人々が犯罪者であるかのように装い、彼らに汚名を着せている。

　しかし、好戦主義者たちによる軍事、経済、政治、イデオロギ−攻勢は、アラブの民衆に対してのみ向けられているのではない。それは大金持ちとそれに奉仕する政府が維持しようとしている世界的無秩序に屈伏し続けることを拒否している者たち全てに向けられているのである。大衆的な戦いで獲得し、今も持ちつづけている僅かばかりの市民権や人権を攻撃するために、右翼はいたる所でそのことを利用している。専制主義者の決まり文句、「自分の側にいない者は、自分に敵対している」という言葉でもって、帝国主義者の警察とその追随者たちは、こうした考え方や行動様式から反対派と考えた全ての人間を攻撃している。たとえば、それは当の合衆国の中で起きていることである。彼らはアメリカ国民が彼らの新たな冒険を支持することを欲している。その事によって彼らは人々の考えを操作し、市民的権利と民主主義を規制し、これ以上の戦争を欲してはいないアメリカ市民を従わせようとしている。そして、私たちの国、メキシコ政府の場合には国民の意見などには留意せず、可能ならば国家主権を弱めてでさえもブッシュ政権の戦争遂行を無条件で支持すると表明した。

　この世界の新たな危機の広がりが明確に示していることは、私たちが生き、そして苦しんでいる世界は持続不能であるということである。つまり、未来はないということなのだ。状況を変えること、再度創造し、作り直すことが必要なのである。別な世界が可能であると私たちは信じている。
　戦争や敵対する両者によるテロリズムは、進むべき道ではない。希望の道だけが民主主義と自由と正義を伴った、生命と人間性の側に立って歩む道なのである。

　　戦争反対！
　　我々の市民権と人権に対する攻撃反対！
　　人種差別と排外主義反対！
　　人間性を求め、新自由主義に反対して闘おう！
　　全ての人々が生きることができる世界を！

　　国家調整委員会
　　サパティスタ民族解放戦線（ＦＺＬＮ）

　　２００１年９月２３日　トラスカラ、メキシコ

（注）１９９７年にサパティスタ民族解放軍（ＥＺＬＮ）の提唱によって誕生したメキシコにおける市民社会の合法的な統一戦線組織。ただし、ＥＺＬＮ自身は現情勢下では武器を置くことはできないとして、あえて参加しなかった。