世界の諸民族に 仲間の皆さん。タタ・フアン・チャベス・アロンソ講座【2013年8月サンクリストバル市CIDECIで開催】で生まれた小道に刻み込まれた我々の先達の足跡を辿りながら、2016年1月30日、マサテコ、ビニサ、チナンテコ、マヤ、プレペチャ、オトミー、ナワ、ウィシャリカ、テペワノ、ツォツィル、チョル、ポポルカ、ソケ、ツェルタル民族の代表団が、オアハカ州トゥステペック行政区サンアントニオ・デ・ラス・パルマスにある先住民族チナンテコの共同体に参集した。チアパス、オアハカ、ベラクルス、ユカタン、カンペチェ、ゲレロ、ミチョアカン、メヒコ、モレロス、連邦地区、ハリスコ州にある32共同体から参集した。 我々が参集したのは、先住民居住域の片隅で、日々、略奪、抑圧、侮蔑、搾取に曝されながら生きている他の人たちと会い、体験に耳を傾けるためである。先住民居住域においては、我々の領域を覆いつくす暴風、資本主義の暗闇に発生した嵐のなかで、雷鳴が轟いている。我々の先祖が歩んだ歴史、我々自身の歴史のなかで今一度知り合うため、我々は出会っている。いくつもの道と遭遇し、探索していき、それぞれの共同体、街区、民族や部族で、自分として生存し続けるためである。それは、世界を大切にするという先住民族が受け継いできた困難な課題のなかで、CNIが日々織り込んでいるものにほかならない。 ここから、我々が見ているものを見渡せる地平線を理解するため、我々は集団的に振り返ることにしよう。上の世界が、多様な装いのもと、我々に提示する欺瞞に満ちた道が見えている。連中はこの戦争で苦しんでいる下の世界の苦痛や絶望に敏感であると吹聴している。また、中間の世界にいる者たちが、我々に提供する道が見えている。彼らは、我々の味方と言いながら、上の世界の者に媚びを売り、抱擁し、対話し、我々の苦痛や希望について交渉している。我々の仲間に、地位、テレビカメラ、日当、資金やプロジェクトを提供し、我々の闘争の形を歪め、下の世界で構築される組織の姿をぼかしている。下の世界にいながら上の世界にいることを夢見ている人が見える。我々に分からない死んだ心をもつ死刑執行人となり、我々を殺害し、分断してきた。自分たちの大地でもあることを知りながら、母なる大地を破壊しようとする連中に売り渡している。政府の目論見は素晴らしいと言って、政府の欺瞞や裏切りを受け入れさせるため、我々の仲間を騙してきた。 しかし、下の世界で分かち合っている道を我々は知っている。それは民族の集合的な心から始まっている。民族の言葉に耳を傾け、我々と同じように、正義が大地に根付くことを理解し、戦い、苦悩する仲間たちの気持ちを理解するものである。その大地は、プレペチャ民族の仲間で、我々の同志フェデリコ・オルティスによって耕されてきた。彼が自ら伝えてきた言葉は、政党に頼ることなく、誰の命令も受けず、こうせよと指示されることなく、単独であろうとも、道を歩みつづけるように勧めるものだった。彼の言葉を思い出しながら、我々はチナンテコ領域で集会を始めた。去る2016年1月23日に亡くなり、フェデリコ自身は集会に出席できなかった。また、2015年2月22日に逝去したCNI広報官・EZLN名誉参謀長フェリックス・セルダン同志のことも思い出す。彼は若者に、「無関心を捨てなければならない。知識を耕し、獲得すべきである。我々が覚醒しなければ、我々はすでに始まったこの騒乱に踏み潰され続けるだろう」と話しかけていた。先立つ2012年6月2日に死去したタタ・フアン・チャベス同志は、「一つの国や民族ではなく、新しい世界の再構築」に向け、不断に、考え、活動すべきだと、繰り返し語っていた。 以上の検討を踏まえ、我々の調整委員拡大集会の合意に基づき、以下宣言する。 （1） チナンテコ先住民領域で進行する生態保護地区の強制、環境サービス課金、エヒード権利証明都市区画認可計画（PROCEDE）や共同体権利証明計画（PROCECOM）など土地私有化につながる計画を通じて行われている領域の略奪を激しく非難する。同時に、チナンテカやサポテカの11共同体の土地を略奪しようとするオアハカ州トゥステペック高速道路に代表される13のトゥーリスト回廊計画の強制にも反対する。これらの計画には共同体の土地における鉱山開発権の付与が伴うことが多かった。2013年6月30日、準軍事組織に待ち伏せ・殺害されたサンアントニオ・デ・ラス・パルマスの共同体当局者マシミノ・サリナス・エルナンデスに対する組織的な犯罪に対して公正な司法裁判が行われていないことを告発する。準軍事組織は悪しき政府の庇護を受けている地域で暗躍し、殺人者どもは今も自由に暗躍している。 （2） ハリスコ州サンロレンソ・デ・アスケルタンの自治共同体にあるテペワノとウィシャリカ民族の共同体の土地すべてを略奪し、私有化しようと企てる悪しき政府の三権力の共謀を告発する。我々は彼らの領域と自治当局者への感謝の念を表したい。 （3） ウィシャリカ民族の自治的な社会組織が依拠している聖地の破壊を断固拒絶することを重ねて表明する。それは、サンルイス・ポトシ州ウィリクタ砂漠の侵略的な鉱山開発プロジェクトを通じて行われている。78件の鉱山開発権に対する執行停止命令にもかかわらず、悪しき政府との明白な共犯関係のなかで、サンアントニオ・デ・コロナドスとプレサ・サンタ・ヘルトゥルデス集落での不法採掘が今も続いている。悪しき政府はこの文化と環境の破壊を確実にしようと、絶えず分断キャンペーンを展開している。 （4） ユカタン州のマヤ民族のエヒードの土地、考古遺跡、聖地を自分のものにしようとする政府や企業側の強欲を告発する。特に、メリダ市チャブレカル共同体では、土地所有権を有する大多数の住民の権利を奪い、金持ちや不動産業者への土地を売却しようとする策動を防止しようとする住民の尊厳にみちた戦いが展開されている。また、カンペチェ州カンデラリアの高額電気料金反対ネットワークのメンバーに対する迫害と抑圧の即時停止を要求する。 （5） チアパス・オアハカ・ベラクルス州にまたがるチマラパス地域の先住民領域の軍事化を非難する。さらに、農地侵略の防止という口実で混合軍作戦基地を設置しようとする企ても非難する。嘘で固めた悪辣な計画や別の領域での略奪により、住民同士の農地侵略を増加させ、紛争を招いた責任は州政府や連邦政府であることをよく知っている。 （6）
ナワとニャト【オトミー】の共同体が繰り返し表明してきた意向を無視し、メヒコ州の複数の集落に次々と押し付けられた死のプロジェクトの撤回を要求する。トルーカ＝ナウカルパン高速道路建設の事案で見られたように、協議と言いながら、実際に行われたのは先住民族の言葉を奪うことであった。高速道路計画の強制は、サンフランシスコ・ショチクアウトラやサンロレンソ・ウィツィツィラパン共同体にあるオトミー・メシーカの森の破壊に反対する声を威嚇するために多くの警察官を配備し、共同体集会の自治を体系的・暴力的に侵害することで有効なものとされた。また、この高速道路建設事業を受注した民間企業アウトバンの重機の警備のため、大量の警察官が動員された。 （7） チアパス州のエヒード・ティラの自治に向けた歩みへの決意、行政区議会から領域を独立させる決意を歓迎したい。また、かつて略奪された三つの農場にまたがる70ヘクタールを取り戻したロス・ラウレレスとサンイシドロ共同体の決意を歓迎する。 （8）
ミチョアカン州サンタ・マリア・オストゥラ共同体の少年イルデベルト・レジェスの殺害者たちに対する絶対的な免責を非難する。少年は、2015年7月19日に共同体警察司令官セメイ・ベルディア・セペーダを拘束するために軍が行った作戦中にメキシコ軍によって殺害された。拘束されたセペーダ自身は2015年12月24日に釈放された。 （9） メキシコ政府は、ゲレロ州アヨツィナパのラウル・ブルゴス農村師範大学の43名の学生同志の生存を明らかにし、この犯罪の責任者である警察・軍隊・政治家の上層部を処罰せよという、決して放棄できない要求を繰り返したい。国家からは、自分たちの犯罪性を隠蔽し、米州人権委員会の独立専門家学際グループ（GIEI）が実施してきた調査を妨害するためにまき散らす嘘と裏切りしか引き出せないことをよく知っている。 （10） 地上や空からの軍パトロール活動の増加にともない進行しているEZLN支持基盤組織の共同体周辺での準軍事組織集団の再結成を非難する。サパティスタの人々に対する戦争は、別の可能な世界を構想し、構築し、戦うすべての人々に対する戦争にほかならないことを警告する。必要となれば、つねにCNIとともに行動する態勢をとっている。 （11）
我々先住民の仲間の政治犯の即時釈放を要求する。犯したとされる唯一の罪は、先住民族のため、未来の世代のため、母なる大地、尊厳、生命を防衛したことである。
我々は下の左側を歩み続ける。そこは我々先住民族の真実と正義が再生する場である。そこでこそ、未来の世代に埋め込まれた心、我々に先立つ人々に張った根源をもとに、我々自身を構築できる。そこで、一つの例外もなく、あらゆる者たちのため、生命は息づき始める。 我々民族の統合的再構成をめざして。 我々抜きのメキシコはもういらない。 2016年2月24日 全国先住民議会 |